[EL11] 頭蓋内脳波 state-of-the art
難治焦点てんかんの根治治療として、てんかん焦点摘出術が確立している。近年の各種非侵襲的検査の進歩および術後成績の蓄積から、画像検査で「焦点が見える」症例では、術中に皮質脳波記録を行い一期的にてんかん焦点切除術が行われるようになってきた。一方,非侵襲的検査で焦点局在が特定できない場合、および焦点が機能野近傍に推定される場合は,焦点領域の作業仮説に基づいて頭蓋内電極を慢性留置し、発作時脳波解析から焦点を同定し、焦点周囲の機能野を同定する。硬膜下電極や深部電極をもちいた皮質脳波記録では、頭皮や骨による伝導率の低下がないため、電極間隔(5mm~1cm)の空間解像度で、頭皮上脳波の5~10倍の振幅で、電極直下の皮質活動を記録できる。近年、電極留置中にMRIやCTなどの解剖画像を撮像し,術前画像とcoregistrationすることで、数ミリの誤差で電極の位置を大脳解剖(脳溝など)と照合することが可能となった。非侵襲記録(MEG、FDG-PET、SISCOMなど)と頭蓋内電極の侵襲記録のデータを個々の患者で照合することが可能となり、包括的にてんかん原性焦点・発作ネットワークの評価や機能温存のための機能マッピングがテーラーメードになされている。同時に、このような頭蓋内電極を用いた頭蓋内脳波記録の機会は、多数症例のデータ蓄積から、病態面ではてんかん原性・ネットワークの解析や機能可塑性の研究、生理面ではてんかん焦点外のデータを蓄積することで正常脳律動のデータベース化、高次脳機能の局在・ネットワークの同定や脳のコネクトミクス研究に応用が可能である。これらの貴重なデータや知見は、我々臨床神経生理医の使命として、基礎・臨床面において脳科学にフィードバックが望まれる。近年のstate-of-the artの知見として、手術手技面では本邦でも導入が始まった定位的頭蓋内脳波(stereo-EEG: SEEG)、解析面ではdecoding、数理解析、コネクトミクス解析など新たな手法の導入が挙げられ、自験データや文献の紹介を予定する。