50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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教育講演

教育講演12

Fri. Nov 27, 2020 2:40 PM - 3:40 PM 第1会場 (2F A)

座長:山田 宏(和歌山県立医科大学 整形外科学講座)

[EL12] 圧迫性脊髄症・神経根症の機能診断

谷俊一 (くぼかわ病院 整形外科)

脊髄症による痙性麻痺では筋力低下よりもむしろ速い随意運動、とくに速い繰り返し運動をスムースに行えないことが歩行などADL障害の主因となる。その簡便な定量的機能評価法として、上肢ではGrip-and-release test、下肢ではFoot-tapping-test、胸郭運動ではMaximum voluntary ventilationが有用である。そして、それは朝起床時や長時間座位など不動の直後、より顕著となることが特徴で、中高年者に高頻度で画像上同時に存在する腰部脊柱管狭窄症における間欠跛行とは対照的であり、両者の鑑別診断の一助となる。脊髄症の高位診断は腰椎部硬膜外腔電気刺激による上行性脊髄誘発電位(A-SCEP)や経頭蓋電気刺激による下行性脊髄誘発電位(D-SCEP)を脊髄近傍組織から術中記録し、伝導ブロックを診断することにより行う。伝導ブロック高位でSCEPは陽性波増大を伴う陰性波低下という特徴的な波形変化を呈し、とくにA-SCEPでは伝導ブロックのすぐ尾側高位で陰性波増大が起こる。これら波形変化は、健常人の正中神経に持続的な経皮的圧迫を加えながら表面電極により順行性感覚神経誘発電位(SNAP)を記録することにより非侵襲的に再現することができる。神経根症において障害神経根を診断する際、一般に上肢ではミオトーム、逆に下肢ではデルマトームの信頼性が高い。C6神経根症では前腕回内の主たる筋力を担う円回内筋、C8神経根症では総指伸筋(橈骨神経支配)、背側骨間筋(尺骨神経支配)、短母指外転筋(正中神経支配)のすべてに筋力低下や針筋電図異常を検出することが重要である。また、上肢挙上障害ではC5神経根症と長胸神経障害(前鋸筋麻痺)や副神経障害(僧帽筋麻痺)との鑑別、下垂指ではC8神経根症と後骨間神経症候群や伸筋腱断裂との鑑別に針筋電図検査が有用である。また、片側性神経根症に由来する運動麻痺の予後診断法として、C5神経根症による上肢挙上障害では鎖骨上窩を電気刺激して三角筋から記録されるM波振幅、L5神経根症による下垂足では腓骨神経刺激により前脛骨筋から記録されるM波振幅の評価が有用である。腰部神経根は脊柱管内で後根神経節よりも近位部における圧迫障害が多い(traversing root compression)が、ときに椎間孔部や椎間孔外で圧迫を受ける(exiting root compression)ことがある。前者の場合、軸索変性は運動神経では圧迫部よりも遠位に、感覚神経では近位に生じるため、下肢末梢でM波の振幅低下があっても浅腓骨神経などSNAPは低下しない。一方、後者の場合にはM波とSNAPが同様に変化することから両者を鑑別できる場合がある。