50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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教育講演

教育講演5

Thu. Nov 26, 2020 2:10 PM - 3:10 PM 第5会場 (1F C-2)

座長:藤井 正美(山口県立総合医療センター脳神経外科)

[EL5] てんかん治療におけるニューロモデュレーションの現状と今後

川合謙介 (自治医科大学 医学部 脳神経外科)

 薬剤抵抗性てんかんの治療として、開頭による外科的治療の適応や成績が明確化され、術前検査や手術手技が標準化された。換言すれば切除手術の限界も明らかとなったわけで、その成績はほぼプラトーに達したと言えよう。限局性病変に伴う焦点性てんかんに比して、側頭葉てんかんを除くMRI無病変てんかんや病変の有無にかかわらず両側多発焦点てんかんに対する発作抑制効果は十分とは言えず、まったく新しい発想やアプローチが求められる。そのひとつがニューロモデュレーション治療である。迷走神経刺激療法(VNS)は本邦では2010年に薬事承認、保険適用となり、2000例を超えた。承認にあたり厚労省から課された承認後3年間の全例登録を利用して行われた多施設、非盲検、長期前向き試験では、全年齢層・全発作型の薬剤抵抗性てんかんを対象とし、登録症例は385例で、植込時年齢は12ヶ月-72歳、19%が12歳未満であった。36ヶ月時点でも追跡率は90%以上で、治療期間6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月での50%レスポンダー率は各々、39%, 47%, 56%, 58%であった。有害事象は咳や嗄声など一過性のものが5%未満で認められた。これらの成績は、欧米からの先行報告と同等かやや良好であり、その普及状況と併せて、VNSは本邦においても緩和的治療としての位置付けが明確になって。2017年8月からは、従来の固定間隔刺激モードとオンデマンド刺激モードに加えて、心拍数増加による自動刺激モードが追加された新型が導入されている。 発作反応型電気刺激(RNS)は2013年に米国で承認され、てんかんセンターを中心に症例数が増大しているが、現時点では米国外では使用できない。接続端子数4極x2の発作検知・刺激装置を頭蓋骨を削除して植込み、脳表電極または脳内電極を症例に応じて大脳のターゲット部位に留置して発作検知および電気刺激を行う。両側側頭葉てんかんやMRI無病変の側頭葉外てんかんなど、焦点切除の効果が期待できない薬剤抵抗性てんかんで有意の発作減少が報告されている。RNSの特長は、てんかんネットワークに対する初めての調節的治療としてのみならず、頭蓋内脳波を常時記録し個々の患者のてんかん病態に迫れる点にもあり、米国では急速に普及しつつある。両側視床前核に対する脳深部刺激療法(DBS)は欧州先行で承認されていたが、盲検試験の終了を受けて、2019年末に米国でも承認された。VNS施行例を含めた薬剤抵抗性てんかんに対して有意の発作減少効果が得られる。本邦で不随意運動に対して行われるDBSと同様の装置を植え込んで間欠的刺激を行う。本邦におけるRNSの承認とDBSのてんかんへの適応拡大は関連学会より厚労省に申請中であり、早期の導入が待たれている。