日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

教育講演

教育講演8

2020年11月27日(金) 08:00 〜 09:00 第1会場 (2F A)

座長:後藤 純信(国際医療福祉大学 医学部 生理学講座)

[EL8] デジタル脳波判読術

飛松省三 (福岡国際医療福祉大学医療学部視能訓練学科)

【はじめに】21世紀に入り、脳波記録はアナログ脳波計(ペン書き脳波)からデジタル脳波計が主となった。デジタル脳波計は、脳波データをアナログ信号からデジタル信号へ変換し、電子媒体でデータ管理と保管を行う脳波計である。機器が小型化され、ペーパレスとなり、電子データはネットワークでも判読できるようになった。【デジタル脳波計の特徴】1)リモンタージュ機能: システムリファレンスを用いて脳波を記録するため、基準電極導出や双極導出など必要に応じてモンタージュを選択できる機能である。てんかん性放電や徐波の局在決定にこのリモンタージュ機能は欠かせない。2)リフィルタリング機能: 時定数(TC: 低域遮断フィルタ)や高域遮断フィルタ(HF)を変えることにより、動きによる基線の揺れや、体動などの筋電図を除去することにより脳波の判読をし易くする機能である。【判読のピットフォール】1)脳波データの質: デジタル脳波計の同相弁別比はアナログ脳波計に比べて格段に向上した。デフォルト設定では、TC 0.3秒、HF 60 Hz (or 120 Hz)、交流(AC)フィルタオフ、感度10 μVで記録する。記録時に安易にTC 0.1秒、ACフィルタオン、HF 30 Hzなどにしないことが肝要である。2)アーチファクト: 電極インピーダンスの高値や電極装着の不良により交流や電極ポップが混入する。電極インピーダンスは10 kΩ以下、皿電極は頭皮にしっかり装着する。3)臨床情報: 判読時に臨床情報があると、視察的分析にバイアスがかかるので、性と年齢だけの情報から、脳波を判読する。小児や高齢者の脳波は、成人とは異なるということを念頭に入れて判読する。【判読のコツ】1)モンタージュ: データがデジタル化されても、判読は視察的になされ、アナログの要素が残っている。頭皮上19カ所の電極がすべて含まれるモンタージュを組んでおく。2)電位の局在と極性の決定: 基準電極導出と双極導出(縦・横)を組み合わせて、決定する。双極導出での“end of chain 現象”と位相逆転により、陰性か陽性かまた電位の最大点が判定できる。耳朶は活性化し易いので、局在決定には不向きである。3)徐波の見方: 間欠的に出現するのか、持続的・局在的に出現するのかにより、徐波の性質は異なる。また、開閉眼、過呼吸、閃光刺激による徐波の反応性を観察することも重要である。4)正常亜型: てんかん原性を判断する上で、ウトウト時に出現する正常亜型を知っておかなければならない。【おわりに】デジタル脳波判読におけるピットフォールとコツを中心に講演した。デジタル脳波計の活用により、てんかん、意識障害、変性疾患の脳機能の変容を知ることができることを強調したい。【参考URL】https://fiuhw.takagigakuen.ac.jp/staff/2666/