50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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教育講演

教育講演9

Fri. Nov 27, 2020 9:20 AM - 10:20 AM 第1会場 (2F A)

座長:小川 潤(静岡赤十字病院)

[EL9] 脊髄誘発電位 研究の始まりから脊髄機能診断まで

四宮謙一 (東京医科歯科大学 整形外科)

本講演では、脊髄誘発電位基礎研究の始まりから脊髄機能診断の臨床まで、を振り返ってみる。【研究開始のきっかけと環境】脊椎外科医を志望して1972年に整形外科に入局したが、当時の画像診断と臨床症状が必ずしも一致しない、術前の予想と術後成績とのばらつきが大きい、手術手技上の問題点を把握できない等々、正確な脊髄機能診断法の開発が必要と痛感していた。当時の大学整形外科には幸いなことにシールドルームや筋電計などの装備が整っており、腰痛の筋電図研究を日本脳波筋電図学会に発表していたが、学会の他の会場で脊髄誘発電位に関する研究に接する機会があり、この手法が問題点を解決できる診断法へと発展する可能性が高いと考えた。【研究計画作成】脊髄誘発電位の先端研究者への質問や研究施設訪問を行い、まずは動物で脊髄誘発電位を記録する基礎的研究手法を獲得した。当時の大学脊椎グループは頚椎後縦靭帯骨化症に対しては直接前方からの除圧が最善であると主張しており、そこで広範な圧迫範囲内での責任障害高位診断や脊髄前方部分を伝導する脊髄誘発電位の記録を目的とする基礎研究計画を立てた。【研究成果】卒後10年程度は大学関連病院での臨床研修の機会が多かったが、大学での基礎研究を休日に行い、臨床検査としては硬膜外5極電極を用いて脊髄誘発電位を記録して高位診断に努めた。また可能な限り学会発表をして批判を受けるように務め、独善にならないように特に注意した。。臨床症例を積み重ねることにより徐々に検査結果と障害高位診断や術後成績との相関を得ることができ、検査法そのものが有効と確信できるようになった。【研究の発展】1990年前後になり多重電気刺激や磁気刺激などの革新的な刺激法が報告された。これらの刺激法を導入することにより振幅が大きく変動の少ない誘発電位を導出でき、術中モニタリングの分野は大きく発展した。その後All Japanで共同研究を行った結果、モニタリングの信頼性を大きく高めることができた。一方、脊髄機能診断のためには非侵襲的な脊髄誘発電位測定法の開発が必要と考え、皮膚上からの脊髄誘発電位記録を試みたが、残念ながら空間分解能が不十分であった。そこで脊髄電位が引き起こす磁場がBreakthroughになるのではないかと考えるに至ったが、幸いなことに21世紀を目前にしてMEG装置を入手できたことから誘発脊髄磁場の研究が開始された。その後も後輩研究者たちの努力により研究は大きく前進し、現在の脊髄磁場計測装置の完成につながった。