50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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イブニングセミナー

イブニングセミナー 小児てんかんの脳波重積状態(小児神経領域) 共催:武田薬品工業株式会社

Fri. Nov 27, 2020 5:00 PM - 6:00 PM 第4会場 (1F C-1)

座長:下野 九理子(大阪大学大学院連合小児発達学研究科)

[ES01] てんかん重積状態の予後と新規治療薬ブコラムに期待される役割

永瀬裕朗 (神戸大学大学院 医学研究科 内科系講座 小児科学分野)

けいれん性てんかん重積状態(CSE)は小児では最も頻度が高い救急疾患の一つである。さらに小児では、けいれん性てんかん発作(CS)、CSEいずれにおいても発熱を伴うことが多い。その原因としては予後良好とされる熱性けいれん(FS)が最多であり、欧米に比べると我が国ではさらに頻度が高い。また、頻度が少ないながら中枢神経感染症のほか後遺症を残しうる急性脳症も含まれる。CSEの神経学的予後不良に最も関連する因子はCSEの原因であり、我が国の小児においては急性脳症が最多である。低年齢と発作持続時間も予後不良に関連するとされる。CSEは治療の観点から発症からの場所、時間経過、治療抵抗性で分類され、各段階での治療が推奨されている。小児けいれん重積治療ガイドライン2017においても、病院前治療、病院到着後のベンゾジアゼピンによる1st line治療、ベンゾジアゼピン抵抗性CSEに対する2nd line治療、2nd line治療に抵抗性である難治性てんかん重積状態RSEに対する昏睡療法である3rd line、そして昏睡療法に抵抗性である超難治性てんかん重積状態(SRSE)といった段階に分類されて記載されている。私たちは小児の発熱に伴うCSEに着目し、ベンゾジアゼピン抵抗性CSE、RSEに対する迅速で十分な介入が神経学的予後を改善するだけでなく、急性脳症への進展を阻止しうることをこれまでに報告してきた。2nd lineに用いられる製剤の発売も相次ぎ、この段階の治療は過去10年で大きく変化した。 一方、初期治療、特に病院前治療に関しては我が国において治療をとりまく環境は依然脆弱である。CSEの多くは病院外で発生するが、病院外でのCSEに対する初期治療を目的とした製剤がなく、CSEに対する有効性が示されていないジアゼパム坐剤が病院前治療や静脈路が確保できない場合の1st line治療としても広く使われてきた。CSEに対する治療開始の遅れは、GABA受容体の内在化による治療抵抗性の増加につながりうるため初期治療の重要性は従来から指摘されているが、近年のRSEを対象とした研究においても1st lineのベンゾジアゼピンの投与の遅れが死亡率と関連することが報告された。このような中、先日CSEに対して病院前での使用も可能な我が国で初めての製剤であるブコラムが発売された。これによりCSEに対する病院前治療、静脈路が確保できない場合の適切な1st line治療が可能になる。初期治療に大きなインパクトを与えることはもちろんのこと、CSEによる神経学的後遺症や急性脳症を減らしうるのかにも大いに注目している。