50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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時実レクチャー

時実レクチャー

Thu. Nov 26, 2020 1:40 PM - 2:40 PM 第1会場 (2F A)

座長:正門 由久(東海大学医学部リハビリテーション科)

[時実レクチャー] 神経筋電気診断学と共に

園生雅弘 (帝京大学 医学部 神経内科)

このたび伝統ある時実賞をいただいたことは、身に余る光栄です。時実利彦先生と言うと、私の入局した東大神経内科は東大脳研の臨床部門で、同じ脳研の生理学部門の初代教授が時実先生だということを何となく知っていた程度でした。しかし、私の一専門である脳死に関して、1969年に時実先生筆頭、本学会の前身のひとつである日本脳波学会から、当時としては世界的にも極めて先進的な判定基準を提唱されていることに驚かされ、それに恥じないようにと、当学会の臓器移植関連学会協議会への入会を遅ればせながら実現したことが最大のご縁です。私個人の来歴と当学会全体とのご縁については2年前お台場大会の会長講演で存分に話させていただきました。今回は神経筋電気診断学について行ってきたことをご紹介します。最初に行ったのは体性感覚誘発電位(SEP)の研究で、楔状束核由来のupper cervical N13の発見が学位論文で、その他、脛骨神経SEP P15電位・正中神経SEP P9電位の遠隔電場電位(FFP)としての起源の解明、正中神経SEP N18電位の起源が延髄楔状束核でのprimary afferent depolarizationであるという説の提唱とその脳死判定における有用性の示唆、脊髄癆病変部位の脛骨神経SEPによる局在、正中・脛骨神経SEPの正常値の確立、CIDP診断におけるSEPの有用性の検討等を行ってきました。SEPは末梢神経~神経根~脊髄の感覚伝導評価手段としての価値が大きく、神経筋電気診断学の一分野として位置づけられるべきと考えています。また、FFPが神経伝導検査での複合筋活動電位に関与することについての諸研究も行いました。針筋電図については、Erik Stalberg教授の下への留学中に運動単位電位(MUP)自動解析プログラム作成をお手伝いし、その過程で神経原性変化の検出感度が極めて高い新しいMUPパラメータSize Index(SI)を提唱しました。SIについては最近筋原性への適用もできるrevised SIも提唱しています。封入体筋炎での深指屈筋の針筋電図の有用性も示しました。単線維筋電図(SFEMG)では、日本の多施設共同研究で同芯針電極を用いたSFEMGの正常値を出すことができました。表面筋電図による神経原性筋原性診断(Clustering Index法)も提唱しました。神経伝導検査では刺激の波及に関連する種々pitfall、陽極刺激の現象、痛みと刺激持続時間との関係などについての研究を行いました。疾患関連では、特にALSで、僧帽筋での針筋電図・反復神経刺激試験の有用性を示す研究、split fingerの提唱を行い、これらから早期診断の新しい方法が提唱できればと考えています。この他、手根管症候群での偽陽性の存在を前提とした正常値の構築、筋節についての新説、ヒステリーでの新しい陽性徴候の提示などを行ってきました。今後もまだまだやりたいテーマについての研究をまとめるとともに、日本及びアジアの神経筋電気診断学のレベル向上に及ばずながら貢献できればと考えています。