50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー11 てんかん 共催:第一三共株式会社/ユーシービージャパン株式会社

Fri. Nov 27, 2020 12:00 PM - 1:00 PM 第4会場 (1F C-1)

座長:吉村 匡史(関西医科大学)

[LS11] てんかん発作の見分け方~高齢者てんかんと認知症~

渡辺裕貴 (天久台病院 精神科)

てんかん発作の症状は、発作を観察する者の立場から分類すると、1)他者から発作と捉えやすい運動性発作、2)自分で異常を自覚可能な感覚性発作、および、3)そのどちらでもない意識障害発作、などにわけることができる。この中で、意識変容のみを呈し、運動症状と自覚症状を伴わない、純粋な意識障害発作の場合は、しばしば失神などの非てんかん性の病態との鑑別が問題になる。てんかん発病率は加齢に伴って次第に上昇していき、高齢者ではかなり高くなるが、高齢者のてんかんは、若年者に比べ自覚症状(いわゆる前兆)を呈することが少なく、意識の変容を主体とする症状の率が高い。そのため、高齢者では患者や家族が発作症状をてんかん発作と考えない、もしくは発作であると認識する時期が遅れる傾向がある。また、てんかん患者は、しばしばてんかんを原因とした何らかの記憶障害を呈する。てんかん患者に特有の記憶障害としては、一過性てんかん性健忘(TEA)、加速的長期健忘、遠隔記憶障害、地誌的記憶障害、などが知られている。これらの記憶障害は若年者でも起こりうるが、高齢者ではより起こりやすいと考えられており、けいれんを伴わない高齢のてんかん患者がこれらの記憶障害を呈すると、認知症と誤認される可能性はかなり高くなる。更に問題を複雑にしているのは、認知症にはしばしばてんかんが合併することである。最も頻度の高い認知症であるアルツハイマー病(AD)では、てんかんが高率に合併すると言われているが、合併率については報告により幅があり、数%から20%程度とされる。ADのてんかんの発病時期について、Vosselらは、AD発病後にてんかんの発病率が上昇していくのではなく、むしろ発病前もしくはその前後にてんかんを発病する率が高いと報告して注目されている。レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症ではそのような傾向は認められないようである。夜間の行動異常が見られた場合、それがてんかん発作の自動症であるのか、それとも認知症の随伴症状であるかの鑑別も必要となってくるが、そのときには夜間の終夜ビデオ記録が有用となる。