50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー15 CIDPの診断と治療 共催:CSLベーリング株式会社

Fri. Nov 27, 2020 12:00 PM - 1:00 PM 第8会場 (2F K)

座長:園生 雅弘(帝京大学医学部)

[LS15] CIDP/MMNの非電気診断

関口兼司 (神戸大学大学院医学研究科脳神経内科学)

 わが国では,手根管症候群も含めた「末梢神経障害」患者は1000万人以上いるとされており,代表的なcommon diseaseである.一方でCIDPは10万人あたり2名前後の稀少疾患であり,MMNは国内に400名しか存在しないが,IVIgによる劇的な治療反応性のために多くの臨床医の注目を集めている.稀少なCIDP/MMN患者をcommonな末梢神経障害患者の中から正確に拾い上げていくことは診察のみでは困難で,神経伝導検査の助けが重要とされてきた.ただし神経伝導検査結果の解釈が難しい症例も多く,厳密な運用を心掛けないと誤診につながる恐れが指摘されている.脱髄性末梢神経障害は電気診断が基本であることは言を俟たないが,典型的CIDPは特徴的な診察所見(筋萎縮がないのに筋力がかなり弱い,遠位も近位も障害される,腱反射が全く出ない,頸部屈曲が保たれる,感覚障害がある)から比較的容易に診断可能であることもまた真実である.免疫グロブリン製剤投与による速やかな症状改善も脱髄性疾患の診断を裏付けてくれる.ただし現時点では,やはり電気生理学的所見が確認されて初めて自らの診断を確信することは,多くの臨床医が経験しているところであろう.
2010年のヨーロッパ連合神経学会・末梢神経学会(EFNS/PNS)の診断基準で,いわゆる古典的な症例をtypical CIDP,それ以外をatypical CIDPとして分け,いずれも「脱髄を疑う電気診断基準」を満足する必要があるとした.それまで重きを置かれていた髄液所見や,神経生検での病理学的所見などは支持基準となり,神経伝導検査がより重要になった.その後の10年で,神経超音波検査とMRI検査が脱髄疾患の補助診断として臨床的に広く活用されるようになり,現在,脱髄性疾患の診断にはなくてはならないものになっている.基準値の問題,機器による違いや測定方法など検査技術の問題があり,中枢神経疾患の診断におけるMRIの寄与度に比べるとまだまだ補助的な役割と言わざるを得ないが,症例によっては明らかな所見を呈することもあるため,全例に施行することが望ましい.また,複数の補助診断技術が出てくると次に再注目されるのは診察所見である.それぞれの検査結果がどのような所見であっても,臨床症候と乖離していては何かの解釈が間違っている可能性がある.複数の補助診断方法が出てきて,ようやく中枢神経疾患の診断と同様の思考プロセスを展開できる状況が末梢神経領域にも整ってきた.本講演では自験例を中心として,診察所見,MRI,超音波といった「非」電気診断が,CIDP/MMNの診断にどのように貢献するのかを提示して,今後の展望を俯瞰していく.