日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー16 神経障害性疼通 共催:第一三共株式会社

2020年11月28日(土) 12:15 〜 13:15 第2会場 (2F B-1)

座長:小谷 善久(関西医科大学総合医療センター)

[LS16] 最新の痛みの診断と治療

南敏明 (大阪医科大学 麻酔科学教室)

痛みは、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛に大きく分類される。侵害受容性疼痛は、病気や怪我に対する有用な警告反応であり、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)、アセトアミノフェンや麻薬(オピオイド)でコントロール可能である。しかし、神経障害性疼痛は、一度、病態が完成すると非常に難治性であり、痛み自体が有害な病態をもたらす。神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛(Pain caused by a lesion or disease of the somatosensory nervous system)と定義され、自発痛、侵害性刺激に対する閾値が低下する痛覚過敏(hyperalgesia)、通常痛みを引き起こさない触覚刺激で惹起されるアロディニア(allodynia)などの症状からなる。末梢神経から大脳に至るまでの侵害情報伝達経路のいずれかに病変や疾患が存在すると、末梢神経終末上の侵害受容器の興奮がなくても脊髄後角神経細胞を含めた上位の神経系で神経応答の過敏性が発現する。神経障害性疼痛の発現機序は、末梢性感作と中枢性感作があり、中枢性感作は脊髄後角における1)グルタミン酸 NMDA(N-methyl-D-asparate)受容体を介した興奮性の増大、2)グリシン GABAなどの脱抑制、3)ミクログリアの活性化などが提唱されている。現在、痛みを定量化することはできないため、神経障害性疼痛の診断のためのスクリーニングツールが開発されている。日本語版Pain DETECTは、9項目の質問をスコア化して神経障害性疼痛を、感度85%、特異度80%でスクリーニングできる。2018年に日本ペインクリニック学会から出された神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版によれば、第一選択薬は、Ca2+チャネルα2δリガンドのプレガバリン、ガバペンチン、2019年4月に新発売となったミロガバリン、セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のデュロキセチン、三環系抗うつ薬のアミトリプチン、ノルトリプチン、イミプラミン、第二選択薬は、ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液、トラマドール、第三選択薬は、オピオイドである。神経障害性疼痛を中心に痛みについて、メカニズム、診断、安全に留意した治療法を、症例を呈示しながら、図やイラストを用いて講演させていただく予定です。