[LS17] 術中アラームポイントの策定の総括およびモニタリング不要の最新脊椎手術―脊椎脊髄病学会モニタリング委員会による多施設調査―
【はじめに】頭蓋上刺激-四肢筋肉記録法(Br-MEP)は最も鋭敏なモニタリングとして位置づけられておりreal timeに的確に手術の侵襲度を表しており、数多くの著者らがその有用性を報告している。今回の研究の目的は、脊椎脊髄病学会モニタリング委員会による多施設調査のデータを元にBr-MEPにおけるアラームポイント策定の歴史を紹介する。【対象および方法】2007-2009年に脊椎脊髄病学会モニタリング委員会により、モニタリングの実態を把握すべく全国多施設調査を施行。モニタリング総数7158例が集計され、それを研究の対象とした。検討項目は1, 術中脊髄モニタリングにおけるMulti-channelの有用性(4channel, 8channel, 16channelの比較)2, multimodal intraoperative monitoring(MIOM)において最適な組み合わせ(Br-MEP, Sp-SCEP, Br-SCEP, SSEPにおいての組み合わせ比較)、3, 波形変化率(手術中最も低下した時の波形のamplitude/コントロール波形のamplitude)と術後MMT低下度の関係を比較検討しアラームポイントを策定する、以上3点である。【結果】1, 術後麻痺した筋に対し、モニタリングが行われていたかを示す術後麻痺筋カバー率(波形低下した筋数/総麻痺筋数)は4channel:73%, 8channel:100%, 16channel:100%であり4channel群は有意に低かった。(p<0.05)2, 各組み合わせの感度及び偽陽性率はBr-MEP+Br-SCEP(90%:6%), Br-MEP+SSEP(80%:9%), Br-MEP+Sp-SCEP(80%:11%), Br-SCEP+ Sp-SCEP(50%:1%)でった。3, 術後MMT1低下群に比べMMT2以上低下群では有意に3カ月以上の麻痺残存率が高かった(27% vs 73%)。(p<0.05)波形変化率とMMT低下度は低い相関を認め、MMT2以上の低下を示唆するのは波形変化が30%以下(70%以上減)の時であった。(r=0.32)【結論】1,術中脊髄モニタリングにおけるchannel数は、少なくとも8 channels以上が望ましいと考える。2, 最適な組み合わせは、最も感度が高く(90%)、偽陽性率(6%)が低かったBr-MEP+Br-SCEPと考える。3, 少なくともMMT2以上低下することを回避すべく、新しいアラームポイントはコントロール波形の30%(70%減)であることが望ましい。