日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー18 高齢者のうつ病の診療 共催:ファイザー株式会社/大日本住友製薬株式会社

2020年11月28日(土) 12:15 〜 13:15 第4会場 (1F C-1)

座長:吉村 匡史(関西医科大学 精神神経学講座)

[LS18] 高齢者のうつ病の診療

工藤喬 (大阪大学キャンパスライフ健康支援センター)

高齢者にみられるアパシーとうつ病はしばしば鑑別が難しい。アパシーは認知症のBPSDで最も頻度が高い症状であり、意欲低下が主な特徴である。一方、うつ病では、一般的に抑うつ気分、罪悪感、不安などが認められ、これらによってアパシーと鑑別できるとされている。しかし、必ずしも鑑別が容易な症例とは限らない。このような場合の治療戦略として、ドパミンの調節がポイントとなるであろう。高齢者のうつ病は、比較的高い高齢者の自殺予防や認知症のリスク軽減の観点から積極的に治療すべきである。高齢者のうつ病は若年者のそれと比して非定型と言える。これは、高齢者脳ではドパミン神経の機能低下が影響しているのかもしれない。前述したようにアパシーとの関連からも、高齢者のうつ病治療にはドパミンの調節が重要なのかも知れない。抗うつ薬はモノアミン仮説に基づいて作用機序が説明されるが、SNRIは前頭前野においてはセロトニンやノルアドレナリンばかりではなくドパミンを上昇させる可能性がある。従って、SNRIはドパミン調節が必要な高齢者うつ病には考慮すべき薬剤と言える。高齢者うつ病は不安症状が前景に出ることも特徴である。従って、治療初期にはSSRI的な作用でこれを治療できるベンラファキシンが選択肢のひとつになる。