50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー4 アウトカムを見据えた抗てんかん薬の選択―患者背景を重視した新しいてんかんの治療戦略- 共催:エーザイ株式会社

Thu. Nov 26, 2020 11:50 AM - 12:50 PM 第4会場 (1F C-1)

座長:神 一敬(東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野)

[LS4] アウトカムを見据えた抗てんかん薬の選択―患者背景を重視した新しいてんかんの治療戦略-

山野光彦1,2 (1.東海大学医学部基盤診療学系 衛生学公衆衛生学領域, 2.東海大学医学部付属病院 神経内科)

 現在,主に成人領域における抗てんかん薬は,2010年にガバペンチン(GBP)が上市され,以降トピラマート(TPM),ラモトリギン(LTG),レベチラセタム(LEV)が使用可能となり,これらの抗てんかん薬は一般的に「新規抗てんかん薬」と定義されている.またこれらの抗てんかん薬が使用可能となり,いわゆる「drug lag」の問題も解消されつつある.これまで新規抗てんかん薬は,バルプロ酸ナトリウム(VPA)や,カルバマゼピン(CBZ)といった「従来薬」との比較において様々に議論されてきたが,概ね有効性は両者に大きな差異はなく,忍容性に代表される安全性に関しては,新規抗てんかん薬の方に優位性が存在するという意見が一般的である.
 新規抗てんかん薬の位置づけが確立された現時点において,2016年にペランパネル(PER),ラコサミド(LCM)が製造販売承認を取得したことから,今後我々は,これらのいわゆる「第3世代」の抗てんかん薬について,その現在地と価値を実臨床,また自らの使用経験などから考える時期に来ている.
 てんかんの特徴は「多様性」と表現されるように,てんかんのある方の患者背景は一人ひとり大きく異なる.学校生活,就労内容,家族背景(構成),居住地,また女性であれば妊娠可能年齢における催奇形性の問題,年齢を経るとともに増加する,てんかん以外の併存症や併用薬の増加によるpolypharmacyの問題などが挙げられる.これらは,主に抗てんかん薬の服薬アドヒアランスをどれだけ確保できるか否かが,重要なkey pointとなる.
 以上より,てんかんのある方,また我々てんかん診療に携わる医師にとっても,当然服薬回数は少ない方がよく,また多様な剤型により投与方法が簡便であること,焦点発作,全般発作など様々な発作型に効能・効果を有するブロードスペクトラムであること,精神症状などの副作用の発現率が低いこと,てんかんを専門としない医師でも簡便に使用できること,などが第3世代の抗てんかん薬に期待される.
 さらにこれらの抗てんかん薬を上手に利用すれば,てんかんの発作再発の誘発因子である不規則な生活習慣や,慢性的な睡眠不足の是正といった生活指導,服薬指導に大きく寄与することも望まれる.新規抗てんかん薬に続く,PER,LCMといった第3世代の抗てんかん薬には,以上のような付加的価値も存在すると思われる.
 本講演では,主にPERの自験例を踏まえ,第3世代の抗てんかん薬による患者背景を重視した新しい治療戦略について考えてみたい.