[LS5] 安全で高精度な低侵襲脊椎手術を目指して -20年間の取り組みから-
脊椎脊髄外科手術は元来高侵襲で神経組織に対するリスクも高いことが患者の手術選択の障壁となってきた。近年本格的な高齢化社会の到来に伴い、脊椎脊髄手術をより低侵襲に合併症なく安全性を担保することが社会的要請となってきた。脊椎脊髄外科の精度向上に寄与した先進技術としてサージカルナビゲーションの貢献は大きく、特にこの10年程の発展には目覚ましいものがある。演者は2000年頃よりこの技術に着手し、小児頚椎病変や高度脊柱変形などに対する有用性を報告した(Kotani Y, et al. J Neurosurg 99, 2003; Spine 22, 2007)。またスクリュー刺入器具先端を正確にナビゲーション出来る特殊機器を企業と開発応用し、多くの施設で臨床応用された(Kotani Y, et al. J Neurosurg 99, 2003)。2012年ごろから術中モバイルCTが本邦でも臨床応用可能となり、演者も2013年に導入した。本機器はナビゲーション器機と接続することで、短時間で極めて高精細なRegistration操作なしのリアルタイムナビゲーションが可能である。術中モバイルCTを応用した3Dナビゲーションの利点は、1)多椎間のスクリュー刺入が正確に短時間で行える、2)刺入後のCT撮像で確認・修正が可能、3)患者体形に影響されない明瞭な三次元画像をガイドとした手技、4)後方経皮スクリュー刺入が安全確実にガイドワイヤーなしに可能、5)後方スクリュー刺入のみでなく、様々な高難度手術の精度向上や低侵襲手術との融合が可能、などである。演者は頚椎・胸椎後縦靭帯骨化症の前方切除・浮上術やLateral interbody fusion(LIF)を代表とする低侵襲前方手技にもこれらを応用しており、かつての職人的手術手技が再現性良く安全にかつ高精度に行える点で3Dイメージングの有用性は極めて高い。皮切やアプローチの低侵襲化には術中3Dイメージングを応用することが最も効率的で、出血量の低減や手術時間の短縮、術後感染の減少や一部の疾患群では残存腰痛の低減などの臨床的効果が報告されている。演者は2015年から腰仙椎部低侵襲前側方固定術(OLIF51)をShort-segmentな変性疾患から脊柱変形手術まで100例を越える症例に応用してきた。OLIF51は単椎間の腰仙部固定において、従来型のMIS-TLIFに比較して骨癒合率の向上(97% vs 92%)、腰椎機能と前弯形成(17度 vs 12度)に優位性があることを報告した(Kotani Y, et al. J Orthop Sci, Sep 12, 2020)。脊柱変形においてもL5/S1椎間で高い骨癒合率と良好な前弯形成が得られることが世界的にも注目されており(Park SW, et al. J Ortho Surg Res 15, 2020)、本講演でも自験例について短期成績を検証して報告したい。