50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー6 CIDPの診断・治療について 共催:日本製薬株式会社

Thu. Nov 26, 2020 11:50 AM - 12:50 PM 第6会場 (2F I)

座長:園生 雅弘(帝京大学)

[LS6] CIDP の電気診断 ~ CIDP or not CIDP, that is a question ~

黒川勝己 (川崎医科大学総合医療センター 脳神経内科)

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)は、2カ月以上進行あるいは再発する後天性脱髄性ニューロパチーである。免疫療法に反応するため、適切に診断したい。CIDP の診断基準としては、2010年のEuropean Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)基準が現在最も用いられている。この基準では、電気診断基準で脱髄の基準を満たすことが必要であり、神経伝導検査は必須となっている。また、CIDP の臨床病型を大きく典型的(typical)CIDP と非典型的(atypical)CIDP に分類し、atypical CIDP として、遠位優位型(DADS)、非対称型(MADSAM)、限局型(focal)、純粋運動(pure motor)あるいは感覚型(pure sensory)を挙げている。このように、CIDP は様々な臨床病型を取りうるため、診断が容易ではない。不可逆的な障害を避けるため、早期診断・早期治療が重要であるが、CIDP はしばしば他の疾患と誤診されているし、反対に、CIDP ではないのに CIDP として治療を受けている患者も稀ではない。さて、ニューロパチーの診断は、実際には症状の分布によって、多発ニューロパチー、多発性単ニューロパチー、単ニューロパチーおよび多発根ニューロパチーに分けることから始まると思う。それぞれのタイプをみた場合、一般にはどのような疾患の可能性があるのか、CIDP であればどのタイプのCIDPの可能性があるのかを知っておくことは大切である。まず、多発根ニューロパチー(近位筋と遠位筋が同様に障害される)であれば、ギラン・バレー症候群や typical CIDP などが鑑別に挙がる。多発ニューロパチー(一般に感覚症状、下肢優位で発症)であれば、糖尿病性多発ニューロパチーなどの代謝性ニューロパチー、遠位優位型(DADS)あるいは純粋感覚型(pure sensory)が対象となる。多発性単ニューロパチーなら、血管炎性ニューロパチーと非対称型(MADSAM)などが鑑別に挙がる。単ニューロパチーの場合は、圧迫・絞扼性ニューロパチー、血管炎性ニューロパチーの初期、限局型(focal)などの鑑別となる。ちなみに、運動症状のみであれば、筋萎縮性側索硬化症と純粋運動型(pure motor)あるいは(CIDP から分離されているが)多巣性運動ニューロパチーなどの鑑別が必要となる。これらの鑑別には、神経学的所見のみでは困難な場合も多く、神経伝導検査を施行し、脱髄所見の有無を確認することが必要であるが、その評価・解釈には pitfall もあり、経過を追うことが大切である。免疫治療によって自覚症状が改善した場合も、それのみで CIDP と判断するのでなく、神経伝導検査所見の改善も確認することが望ましいと考える。今回、実際の症例を提示しながら、CIDP なのか not CIDP なのかを考え、電気生理検査を行うことの有用性、検査をフォローすることの大切さを述べたい。日常診療における CIDP の診断について参考になる点があれば幸いである。