日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ランチョンセミナー

ランチョンセミナー7 神経磁界計測による神経活動の可視化 共催:株式会社リコー

2020年11月26日(木) 11:50 〜 12:50 第7会場 (2F J)

座長:松山 幸弘(浜松医科大学整形外科学講座)

[LS7] 脊磁図・末梢神経磁図による新しい神経機能評価

川端茂徳1,2, 橋本淳2, 佐々木亨2, 関原謙介1, 星野優子1, 赤座実穂3, 足立善昭4, 渡部泰士5, 宮野由貴5, 四宮謙一2, 大川淳2 (1.東京医科歯科大学大学院 先端技術医療応用学講座, 2.東京医科歯科大学大学院 整形外科学, 3.東京医科歯科大学大学院 呼吸器神経系解析学分野, 4.金沢工業大学 先端電子技術応用研究所, 5.株式会社リコー)

 神経の局所の伝導障害の診断には、神経走行に沿って電極を設置し誘発電位を測定するインチング法が有用であるが、従来の電位計測では周囲組織の電気抵抗の影響を強く受けるため、神経走行が浅い部位、もしくは手術中に神経近傍に電極を設置することでしか検査することができなかった。一方、神経の電気活動により発生する磁界は生体組織の影響を受けないため、神経誘発磁界を体外から測定することで、発生源の電流を逆に計算することができる。神経磁界計測法では、体の深部かつ骨組織の中にある脊髄でさえ、神経電気活動をインチング法同様に詳細に評価することができる。
 我々は金沢工業大学、リコーと共同で脊髄・末梢神経用の神経磁界計測装置の開発をおこなっており、近年、ヒトの頚椎~腰椎の脊髄・神経根活動および、腕神経叢~手部の末梢神経活動の可視化と伝導障害の評価が可能になってきた。
 本講演では、脊磁図・末梢神経磁図の基本的な知識から、頚椎・腰椎疾患、腕神経叢障害症例、末梢神経障害症例など臨床例の測定結果など、最新の知見までご紹介したい。
 これまで、高感度磁気センサの駆動に液体ヘリウムによる冷却が必要なため、高額なランニングコストが課題であったが、技術の進歩により解決し、一般への普及の条件は整いつつある。
 脊磁図・末梢神経磁図は、これまで評価することができなかった深部の神経の機能評価および詳細な障害部位診断が可能である革新的な検査法である。無侵襲な検査法であることから、治療前の障害部位診断のみならず、病態の研究、治療法の効果判定など、神経疾患医療に幅広く貢献することが期待される。