日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

会長講演

会長講演

2020年11月26日(木) 08:30 〜 08:50 第1会場 (2F A)

座長:中里 信和(東北大学てんかん学分野)

[会長講演] 整形外科における電気生理学の歴史と今後の展開

齋藤貴徳 (関西医科大学整形外科学講座)

 今回は、日本臨床神経生理学会における第50回記念大会の会長を拝命し、その責任の重さと、巡り合わせの妙に気の引き締まる思いを感じております。奇しくもコロナ禍での開催となり、例年通りの開催が困難になってしまいましたが、歴史ある本学会なればこそ出来る新しい学会の形を実現しようと気持ちを切り替え準備を行ってまいりました。皆様方のご支援によりこの会長講演が行われる頃には万全の準備が整い、皆様方をお迎えしていることを祈念しております。 
 私が関西医科大学を卒業しましたのは昭和58年でした。卒後2年たち大学院に進学を決意し、当時の第2生理学教室に進学しました。当時の教室は安原基弘教授が電気生理学の動物実験を指導しておられ、脳幹網様体に微小電極を刺入し、破壊刺激実験を行っておりました。この4年間で電気生理学の基礎を学びました。大学院を卒業するとともに安原教授のすすめがあり、また、私自身も当時世界中が注目していたアイオワ大学への留学を決め、1989年から1年間アイオワ大学の神経内科電気生理学部門の木村淳・山田徹両教授から直接指導をいただけるという幸せな研究生活をおくり貴重な経験をさせていただきました。当時のアイオワ大学では山田教授のご指導により体性感覚誘発電位の各コンポーネントの起源の解析を行っており、ニコレー社のパスファインダーという大型の器械で二重刺激によるlate phase supressionの研究を行いました。当時の経験が今でも私の電気生理学的研究の根幹をなしております。日本に帰国してからは同じ近畿圏におられた和歌山医大の玉置先生から術中モニタリングを中心にご指導頂き各種誘発電位を用いた臨床応用の研究を行ってきました。術中モニタリングに関しては日本で玉置教授らにより開発された脊髄刺激―脊髄記録の画期的な手法が研究されており、米国でのSEPによるモニタリングとの違いに戸惑いながらも両者の利点を追求する方向で研究を続けていました。このような状況下において経頭蓋刺激の筋記録誘発電位という手法が報告され、新たな時代へと発展することになりました。この手法は全世界のモニタリングを実施している研究者が夢にまで見た運動系のモニタを初めて可能とした画期的なもので、当初はfales positiveに悩みましたが、次第に改良を加え実用化されていきました。
 今回大会長としての発表の機会を与えていただき、何を話そうかと迷いましたが、一つのテーマに絞るのは難しく、最終的に私の研究歴をお話したいと思います。現在関西医科大学では術中モニタリングの研究とともに脊磁計の研究を開始しており、神経機能の評価を電気的な変化から磁場の変化による評価に進化させようとしております。脳磁計はすでに実用化されておりますが、脊髄と末梢神経、筋に特化した機器を開発し実用化を目指しております。長年この分野で研究を先導してこられました東京医科歯科大学と株式会社リコーとの共同研究として今年度より開始致しました。これらの最新の知見を含め、モニタリングの歴史とともにご報告させていただく予定です。宜しくお願い申し上げます。