50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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50回大会記念シンポジウム

50回大会記念シンポジウム iPS細胞の臨床応用-現状と未来-

Fri. Nov 27, 2020 4:00 PM - 6:00 PM 第1会場 (2F A)

座長:人見 浩史(関西医科大学iPS・幹細胞再生医学講座)、木村 淳(アイオワ大学 神経科 臨床神経生理部門)

[50回大会記念シンポジウム-3] 眼科における臨床応用

西田幸二1,2 (1.大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学講座(眼科学), 2.大阪大学 先導的学際研究機構 生命医科学融合フロンティア研究部門)

ヒトは外界の情報の80%を視覚から得ているとされており、難治性の眼疾患により生活の質QOLが損なわれている数多くの患者が存在する。例えば、網膜色素変性症、重症の緑内障や黄斑変性、Stevens-Johnson症候群などの瘢痕性の角膜疾患などである。これらの病気のために、多くの患者が失明状態にある。その克服のために、再生医療や人工視覚、バイオ医薬品の開発など、先端的な治療法の開発が世界中で展開されている。眼は外界に接している器官で、種々の介入が行いやすいということや、その結果を直接観察して評価しやすいなどの利点があり、先端的医療の導入が進んでいる領域である。現在角膜移植術が必要な患者は全世界で100万人以上と見積もられている。しかし、実際に角膜移植を受けている患者数は年間6万人足らずであり、多くの国で提供眼球不足が大きな問題となっている。また、術後に生じる拒絶反応が大きな問題点となっている。このような現在の移植医療が抱える問題点を抜本的に解決するため、患者自身の細胞を用いた再生医療の開発が待望されてきた。片眼性の角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)に対する自家培養角膜上皮幹細胞の移植は、1998年にLancetに初めて報告されたが、2015年に本技術がHoloclarという名称でEUにおいて認可され、日本でも今年3月「ネピック」という製品名で認可を受け、6月に保険収載された。一方、両眼性のLSCDに対しては、自家口腔粘膜幹細胞を細胞源とする口腔粘膜上皮細胞シート移植(COMET)を世界で初めて開発してきた(New Engl J Med 2004)。さらによりよい視力回復が得られる方法を目指し、人工多能性幹(iPS)細胞を用いた角膜再生治療法についても研究を行い、iPS細胞から角膜上皮細胞等を誘導することに成功した。これらの成果をもとに、2019年7月、iPS細胞から作製した角膜上皮細胞シートを角膜上皮幹細胞疲弊症の患者1名に世界で初めて移植し、現在、同患者を含む3名に移植し、経過観察中である。本講演では角膜の再生医療の現状と展望について紹介するとともに、臨床への実現化という視点から、再生医療の開発がどのステージにあるかをお話ししたい。