日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

特別シンポジウム

特別シンポジウム 脊髄損傷における最近の進歩

2020年11月26日(木) 13:00 〜 14:30 第2会場 (2F B-1)

座長:松山 幸弘(浜松医科大学整形外科)、齋藤 貴徳(関西医科大学整形外科学講座)

[特別シンポジウム-1] 急性脊髄損傷に対するG-CSF神経保護療法およびMuse細胞移植:臨床試験

山崎正志1, 國府田正雄1, 古矢丈雄2, 牧聡2, G-SPIRIT 研究グループ1 (1.筑波大学 医学医療系 整形外科, 2.千葉大学大学院医学研究院整形外科学)

顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は血球系に作用する増殖因子であるが、中枢神経系における神経保護作用も有する。我々はG-CSFが脊髄損傷動物モデルの後肢機能を改善させること、その機序として、G-CSFにより動員された骨髄由来幹細胞が脊髄損傷部に生着する、直接的に神経細胞死を抑制するなどの効果を報告した。
 これらの根拠から我々は、急性脊髄損傷患者に対する治療薬としてのG-CSFの安全性・有効性を証明するための医師主導型自主臨床試験を施行した。安全性確認を主目的とするPhase I/IIa臨床試験は2008年6月に開始となり、結果として、G-CSF神経保護療法の安全性が確認され、G-CSFの至適投与量・投与期間は10μg/kg/日の5日間連続投与と結論された。この結果を踏まえ、我々は有効性評価を主目的とするPhase IIb臨床試験(多施設前向き・非ランダム化・非盲検化比較対照試験)を2009年8月に開始した。急性期頚髄損傷患者(受傷後48時間以内)を試験に登録し、G-CSF 10μg/kg/日を連続5日間点滴静注するG-CSF群、G-CSFを投与せずに同様の治療を行う対照群に振り分けた。G-CSF群19例と対照群26例が解析の対象となった。受傷後3ヵ月時のASIA運動スコア獲得点数はG-CSF群で26.1±18.9、対照群で12.2±14.7であった(p<0.01)。G-CSF投与期間中および投与後に重篤な有害事象の発生はなかった。本試験の結果から、G-CSF神経保護療法は急性脊髄損傷患者における脊髄障害を軽減させる効果を有すると考えられ、G-CSFが急性脊髄損傷に対する新たな治療薬となる可能性が示された。
 現在我々はG-SPIRIT研究グループを組織し、Phase III臨床試験を多施設前向き・ランダム化・プラセボ対照・二重盲検試験として医師主導で実施し、急性脊髄損傷に対するG-CSF神経保護療法の有用性および安全性の検証を進めている。本シンポジウムでは、その進捗を報告する。我々は急性頚髄損傷患者に対するMuse細胞移植の臨床試験も行っており、その概略についても報告したい。
【G-SPIRIT研究グループ】
千葉大学、筑波大学、獨協医科大学、神戸赤十字病院、岐阜大学、三重大学、浜松医科大学、新潟大学、広島大学、東海大学、山口大学、筑波メディカルセンター、船橋医療センター、君津中央病院、金沢医科大学、千葉労災病院、長崎労災病院、東北大学、中部労災病院