[特別シンポジウム-2] 自己骨髄間葉系幹細胞の静脈内投与による脊髄損傷治療
札幌医科大学では2014年1月より、医師主導治験「脊髄損傷患者に対する自己培養骨髄間葉系幹細胞の静脈投与」を行った。対象は、発症から14日以内の頸髄損傷で、年齢が20-70歳、ASIA Impairment Scale(AIS)がA, B, Cの重度麻痺症例とした。患者の腸骨から骨髄液を採取し、細胞プロセッシング施設(CPC)にて約2週間かけて間葉系幹細胞(MSC)を1万倍に培養した。細胞の品質・安全性を確認し、受傷後40~50日で経静脈的に移植を施行した。神経学的評価としてAISおよびISCSCI-92を、ADL評価としてSCIM-3を用いた。主要評価項目は、脊髄損傷発症後220日目における移植直前からのAISが1段階以上改善した症例の割合とした。
13例の頚髄損傷症例(男性12例、女性1例)に対してMSC移植を施行した。13症例中12例(92%)で主要評価項目を達成した。MSC移植前AISがCの5例全例と、A、Bの各1例においては、MSC投与の翌日からAISの1段階の改善を認めた。重大な副作用は発生しなかった。
本治験の結果を踏まえ、厚生労働省は2018年12月、本細胞製剤(ステミラック注、ニプロ株式会社)の製造販売を条件・期限付きで承認した。2019年5月より、保険診療としての脊髄損傷患者に対するステミラック治療を開始した。保健診療下に脊髄再生医療が実施されるのは世界初となる。ステミラックの適用は、AIS A、B、Cの外傷性脊髄損傷であり、損傷高位や年齢の制限は設けられていない。受傷後31日以内に骨髄液を採取することが定められている。また、厚生労働省は「最適使用推進ガイドライン」を策定し、施設要件や責任医師要件を定めている。今後は、ステミラック投与群と対象群(標準治療群)について安全性、有効性に関する使用成績比較調査(PMS)を行っていく必要がある。
これまでのところ、ステミラック注を投与した脊髄損傷症例において、治験とほぼ同様の機能回復が得られている。本講演では、ステミラック治療の経過報告に加え、本治療法の今後の発展性についても言及する。
13例の頚髄損傷症例(男性12例、女性1例)に対してMSC移植を施行した。13症例中12例(92%)で主要評価項目を達成した。MSC移植前AISがCの5例全例と、A、Bの各1例においては、MSC投与の翌日からAISの1段階の改善を認めた。重大な副作用は発生しなかった。
本治験の結果を踏まえ、厚生労働省は2018年12月、本細胞製剤(ステミラック注、ニプロ株式会社)の製造販売を条件・期限付きで承認した。2019年5月より、保険診療としての脊髄損傷患者に対するステミラック治療を開始した。保健診療下に脊髄再生医療が実施されるのは世界初となる。ステミラックの適用は、AIS A、B、Cの外傷性脊髄損傷であり、損傷高位や年齢の制限は設けられていない。受傷後31日以内に骨髄液を採取することが定められている。また、厚生労働省は「最適使用推進ガイドライン」を策定し、施設要件や責任医師要件を定めている。今後は、ステミラック投与群と対象群(標準治療群)について安全性、有効性に関する使用成績比較調査(PMS)を行っていく必要がある。
これまでのところ、ステミラック注を投与した脊髄損傷症例において、治験とほぼ同様の機能回復が得られている。本講演では、ステミラック治療の経過報告に加え、本治療法の今後の発展性についても言及する。