[SP11-2] 神経磁界計測装置を用いた健常者の上位頸髄の非侵襲的機能評価
【目的】神経磁界計測装置(magnetoneurography, 以下MNG)を用いた従来の肘部正中神経刺激後の頚髄神経誘発磁界の計測では上位頚髄の伝導は確認できなかった。今回我々は腋窩部正中神経刺激を行い、上位頚髄神経誘発磁界の計測と再構成電流の可視化について健常者での検討を行った。【方法】対象は四肢神経症状を有さない健常成人5名、5 神経、年齢は26-60歳(平均41歳)、男性4名、女性1名であった。右腋窩より遠位2-3cmの上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋 間で正中神経に電気刺激を加え、MNGを用いて上位頚髄神経誘発磁界を測定した。この際、尺骨神経を同時刺激しな いように小指外転筋-複合筋活動電位をモニタリングした。また刺激強度は短母指外転筋-複合筋活動電位の最大上刺 激(6.6-9.4mA、平均7.68mA)とし、刺激頻度5Hz、刺激幅0.3msとした。記録は100Hz-5kHの周波数帯域で記録し4000 回平均加算を行った。【結果】5例全例で上位頸髄において神経活動に由来する磁場データを確認することができた。 肘部正中神経刺激時の磁場と比較して腋窩部刺激では約1.5-2倍の増強を認めた。特に神経膜上の脱分極点に相応する と考えられる内向きの再構成電流の上行伝搬は5例中3例でC2レベルまで、残り2例においては脳幹部付近まで確認で きた。また軸索内先行電流は、刺激側である脊髄右側を上行していた。再構成電流より試算した推定伝導速度は平均 72.8m/sec(65-78m/sec)であり、頚椎単純X線像との重ね合わせで神経活動の可視化も確認できた。【考察および結 論】MNGを用いた頚髄神経誘発磁界の報告は既にKawabata,Sumiyaらによって報告されており、当院においても概ね 同様の結果が得られている。しかし、従来の方法では上位頚髄の神経誘発磁界はtemporal dispersionの影響で得られ なかったが、より中枢である腋窩部刺激を行うことで磁場計測が可能になった。今後、上位頚髄疾患の機能診断に MNGが有用な検査となりうることが期待される。