日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム12 レム睡眠行動障害研究の進歩

2020年11月26日(木) 16:30 〜 18:00 第8会場 (2F K)

座長:宮本 智之(獨協医科大学埼玉医療センター脳神経内科)、野村 哲志(のむらニューロスリープクリニック)

[SP12-3] RBDにおけるsleep injuryについての検討-神経生理学的側面より-

宮本雅之1,2 (1.獨協医科大学看護学部看護医科学(病態治療)領域, 2.獨協医科大学病院睡眠医療センター)

 レム睡眠行動異常(RBD)は、悪夢をみて暴力的な動作・行動をとるレム睡眠関連の睡眠時随伴症である。ビデオ監視下での終夜睡眠ポリグラフ検査(ビデオPSG)では筋緊張低下を伴わないレム睡眠(REM sleep without atonia: RWA)あるいはレム睡眠中に運動・行動(REM sleep behavior event: RBE)が観察される。
 Schenckらは、睡眠に関連した外傷にて睡眠障害センターを受診した連続100例の成人について、病歴とPSGにて検討したところ36例がRBDであり、RBDは睡眠関連外傷(sleep injury)の原因のひとつになりうることを示した。ゆえに、RBD患者の睡眠中の異常行動を予知することは、行動に伴う外傷を予防する観点から重要である。RBEは突発的にみられることと、ビデオPSGの施行は、コストパフォーマンスの面から頻回に行うことに限界があることから、RBEの予知に、簡便かつ反復してモニタリングできる方法の開発が望まれている。このことから、演者は、高齢者や認知症患者の離床・徘徊予測に用いられる介護施設用の見守り支援機器(株式会社アール・ティー・シー、栃木県上三川町)の応用による、RBDにおける夜間の異常行動の検出力の有効性を検証した。今回は、第49回本学会学術大会(2019年,福島)での報告に続き、その後、検証した結果を紹介する(平成28年度科学研究費基盤研究C一般16K01564)。
 さらに、2020年にはWangらが、特発性RBDにおいて、クロナゼパムまたはメラトニンによる治療にもかかわらず、睡眠関連外傷あるいは外傷を起こしうる行動が残存することが、レビー小体型認知症の発症リスクを予測しうることを報告した。特発性RBDにおける睡眠関連外傷と神経変性疾患発症リスクとの関連についてもここで触れたい。