50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム13 てんかん外科における脳機能モニタリング

Fri. Nov 27, 2020 8:20 AM - 9:50 AM 第5会場 (1F C-2)

座長:三國 信啓(札幌医科大学 脳神経外科)、松本 理器(神戸大学脳神経内科)

[SP13-2] 頭蓋内脳波による言語機能解析

岩崎真樹1, 池谷直樹2, 高山裕太郎1, 飯島圭哉1, 浅野英司3 (1.国立精神・神経医療研究センター 病院 脳神経外科, 2.横浜市立大学 医学部 脳神経外科学, 3.ミシガン小児病院 神経診断科)

【目的】認知負荷によって増強する高ガンマ帯域活動(high gamma augmentation: HGA)を解析することで、脳機能をダイナミックに観察できる。聴覚刺激による名詞生成課題では、文章課題の終了時をピークに中側頭回、縁上回、下前頭回の傍シルビウス裂領域にHGAが生じる。視覚刺激による名詞生成課題では、後頭葉から紡錘状回を含む腹側視覚路にHGAが生じる。これらは主に英語話者を対象に得られた知見であり、日本語話者においても同様なのかは十分に明らかではない。その疑問に答える目的に本研究を実施した。
【方法】てんかんの術前精査を目的に慢性硬膜下電極留置を行った成人日本語話者10名を対象とした。全例右利きで、5例は左半球、4例は右半球、1例は両側に電極が留置された。合計428個の硬膜下電極が解析対象に含まれた。ベッドサイドにて聴覚性および視覚性名詞生成課題を実施した。聴覚性課題では、1.8秒間の疑問文を聞き音声で回答する課題を100問実施した。視覚性課題では、スクリーンに提示された物体の名称を音声で回答する課題を60問実施した。課題実施下の脳波をサンプリング周波数1,000Hzで記録し、BESAソフトウェアを用いて時間周波数解析を行った。65~95Hz帯域の活動のベースラインに対する振幅の変化を求め、ブートストラップ法に基づいて統計学的な有意性を評価した。
【結果】聴覚性課題では、刺激の提示時に上側頭回・下部中心前回に、刺激終了とともに左中側頭回・縁上回・下前頭回に、回答開始時に両側の下部中心前回・下部中心後回・両側上側頭回にHGAが認められた。視覚性課題では、後頭葉と紡錘状回にHGAが認められたあと、回答直前から左中側頭回と下前頭回、左右の下部中心前回と中心後回を含む広い領域にHGAが認められた。後頭葉と紡錘状回のHGAは視覚性課題に、両側上側頭回および左中側頭回~縁上回~下前頭回のHGAは聴覚性課題に有意に関連した。回答時に見られる下部中心前回・中心後回のHGAは両課題に共通していた。この結果は、英語話者を対象に同様の課題で実施された過去の報告と同様であった。
【考察】文章の聴覚性認識と物体の視覚性認識にかかわる神経ダイナミクスは、英語も日本語も同様と考えらえる。左傍シルビウス裂ネットワークは、統語的な処理において強く賦活される。