50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム14 機能性神経障害とその電気生理

Fri. Nov 27, 2020 8:20 AM - 9:50 AM 第6会場 (2F I)

座長:園生 雅弘(帝京大学医学部脳神経内科)、吉村 匡史(関西医科大学医学部精神神経科学教室)

[SP14-1] 転換性障害の精神的概念

吉村匡史, 齊藤幸子, 木下利彦 (関西医科大学 医学部 精神神経科学教室)

転換性障害(Conversion Disorder)は、アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5の日本語訳では「変換症/転換性障害(機能性神経症状症; Functional Neurological Symptom Disorder)」とされている。その診断基準では、転換性障害との診断には以下のAからDを満たす必要がある。
A. 1つまたはそれ以上の随意運動、または感覚機能の変化の症状
B. その症状と、認められる神経疾患または医学的疾患とが適合しないことを裏づける臨床的所見がある。
C. その症状または欠損は、他の医学的疾患や精神疾患ではうまく説明されない。
D. その症状または欠陥は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている、または医学的な評価が必要である。
すなわち、患者は運動機能ないし身体機能の変化を訴え、その症状が臨床的に明らかな苦痛または日常生活における支障をもたらしているが、症状を生理学的、解剖学的に説明することが困難な状態を指す。以前はヒステリーと呼ばれていたがその用語はさまざまな意味で用いられるため、本診断基準のみならずWHOの診断基準であるICD-10からもヒステリーとの診断名は使用されていない。ここで取り上げているヒステリーは、元来、恣意的なものではないが誰にでも生物学的に備わっている原始的な欲動の反応様式に従った反応と考えられていた。症状を有することによって葛藤や不安が解消することから「疾病への逃避」と呼ばれることもある。しかし、上述のDSM-5では、心理的ストレス因が認められない場合でも診断が可能となっている。本講演では、転換性障害に関して、最近の概念を中心に精神科的な側面から説明を加える。