日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム14 機能性神経障害とその電気生理

2020年11月27日(金) 08:20 〜 09:50 第6会場 (2F I)

座長:園生 雅弘(帝京大学医学部脳神経内科)、吉村 匡史(関西医科大学医学部精神神経科学教室)

[SP14-3] 心因性非てんかん性発作と電気生理

村田佳子 (埼玉医科大学病院)

心因性非てんかん性発作(psychogenic nonepileptic seizures: PNES)は、てんかん発作に類似した症状を示すが、てんかん発作の原因である大脳の神経細胞過剰興奮がなく、他の身体的・生理的な病態もなく、何らかの心理的要因が推測されるものである。PNESはてんかん学の立場から提唱された症候群であり、精神科ではPNESではなく解離性障害または転換性障害と診断されることが多い。心因性という名称はあるものの心理的要因との因果関係を示すことが難しく、本人がその心理的要因に気づかないことも多い。PNESは、てんかんとして初診する患者の5~20%にみられ、てんかんの主要な鑑別診断の一つである。てんかんとPNESが併存することもあり、診断や治療に苦慮することも多い。日本てんかん学会は、PNESの診断に際し、病歴聴取および発作症状の観察からPNESを疑い、長時間ビデオ脳波検査で発作が非てんかん性であることを確認し、一定期間の治療的介入により総合的に評価することを推奨している。PNESを疑う病歴として、症状があいまいな複数の発作型を有する、抗てんかん薬の多剤併用によっても改善が得られずますます悪化している、などである。難治性てんかんでも同様の病歴がみられるが、発作症状は定型的である。PNESを示唆する特異的な症状は、発作中の閉眼、非同期性の運動症状、発作中の頭や体の横振り、咬舌、発作症状の動揺である。これらの症状が一つ存在することでPNESと診断することは誤診を招く可能性があり、総合的に判断することが重要である。確定診断は、長時間ビデオ脳波検査により発作症状出現時の脳波異常欠如を確認することであるが、ある症状がPNESと診断されても他の症状がてんかん発作である場合があるため、診断には慎重を要する。また検査中に発作症状が出現せず診断に至らない場合があり、家族や支援者に動画撮影を依頼し発作症状を医療者が確認できるよう努める。PNESは、初発発作から診断されるまでの期間は平均7年との報告がある。この間抗てんかん薬を投与されるも症状の改善が得られず副作用に悩み、検査や入院が繰り返されQOLが低下する。PNESは罹病期間が短いほど予後がよく、診断の遅れは難治化、慢性化につながるため、早期の適切な診断が重要である。PNESでは、診断そのものが治療の第一段階であり、また、診断の伝え方がその後の治療経過に影響しうるため、患者の心理状態に配慮した説明や関わりが求められる。