50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム16 脳卒中上肢運動麻痺への様々なアプローチ

Fri. Nov 27, 2020 1:15 PM - 2:45 PM 第7会場 (2F J)

座長:菅原 憲一(神奈川県立保健福祉大学)、鈴木 俊明(関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

[SP16-1] ストレッチと運動イメージを併用した脳血管障害片麻痺患者の麻痺側上肢に対するアプローチ

鈴木俊明 (関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

麻痺側母指屈筋群の筋緊張が高度亢進により麻痺側母指の随意運動が困難であった脳血管障害片麻痺患者の上肢運動機能の向上を目的として、麻痺側上肢屈筋群のストレッチを実施したのちに、運動イメージ練習を実施した。症例は母指屈筋群の筋緊張に高度亢進を認め、随意運動を全く認めない左脳出血(被殻)による右片麻痺患者である。麻痺側上肢屈筋群のストレッチは、我々の研究より麻痺側母指屈筋群だけなく、麻痺側手指、手関節、肘関節屈筋群を同時にストレッチすることで麻痺側母指に対応する脊髄運動神経機能の興奮性の低下を認めた報告(suzuki et al, 2003)から、麻痺側上肢を全体的に伸展方向へのストレッチを行った。ストレッチを実施した後に運動イメージ練習を実施した。本症例の運動イメージの具体的な方法を検討するために、次の4つの課題を設定した。課題1は、麻痺側母指伸展イメージ、課題2は麻痺側手指全体の伸展イメージ、課題3は非麻痺側母指伸展運動にあわせた麻痺側母指伸展イメージ、課題4は非麻痺側手指伸展運動にあわせた麻痺側手指全体の伸展イメージの4課題である。各課題は1分間実施し、課題間には5分間の休憩をおこなった。また、運動イメージ課題前、運動イメージ課題中には麻痺側正中神経刺激での母指球上の筋群よりF波を記録した。F波波形より振幅F/M比を検討し、各課題の効果検討をおこなった。4つの課題においては、課題4である非麻痺側手指全体を伸展と麻痺側手指全体を伸展する運動イメージにおいて、母指球上の筋群より記録したF波の振幅F/M比は最も低下した。そのため、ストレッチと課題4を想定した運動イメージを併用した運動療法を3か月間(週2回、1回20分)実施した。その結果、麻痺側母指の随意運動は経度ではあるが可能となった。また、再度、4つの課題における運動イメージ課題前、運動イメージ課題中での麻痺側正中神経刺激での母指球上の筋群よりF波を記録し、振幅F/M比を検討した。4つの課題において振幅F/M比は安静時と比較して低下した。母指屈筋群の筋緊張亢進が高度なために随意性が低下している症例への運動イメージは、非麻痺側上肢の随意運動をともなわせることが効果的であった。また、麻痺側母指という限局した部位の運動イメージよりも手指全体の動きを運動イメージさせることが重要であることが示唆された。