[SP18-3] 運動学的および神経生理学的評価に基づく歩行訓練の展開
脳卒中の歩行リハビリテーションでは、片麻痺者の移動能力の安全性、安定性、効率性を最大限に高めることを目標としている。そのためには、麻痺側下肢への集中的トレーニングにより機能回復を促し、非麻痺側下肢での代償を適切に管理することが重要となる。エネルギー効率の良い歩行を獲得するためには、左右下肢で生成される制動力と推進力を制御しながら、円滑に体重の受け継ぎ(step-to-step transition)を行うことが求められる。この両脚支持期の制御をいかに改善できるかが、片麻痺歩行の治療効果の決定因子になると考えられる。麻痺側下肢の制御に着目すると、荷重応答期では制動力による重心の減速と上方への方向付けが行われるため、続く単脚支持期の倒立振子運動の形成にとって重要な歩行相となる。また、立脚後期に前方推進力が十分に生成されることにより、前遊脚期において重心の前方加速と上方への方向付けが行われ、速やかな抜重によって遊脚期の二重振子運動が生じるようになる。片麻痺歩行で認められるこれらの制御の異常は、両脚支持期の延長、歩幅の低下、歩行速度・持久力の低下、非麻痺側下肢への代償を強める要因となり、原因を評価してトレーニング方法を決定することが必要である。
評価にあたっては、歩行観察に基づいて逸脱運動を同定し、それが歩行制御における本質的な問題になっているかどうかを判別し、トレーニング方法を決定する手続きがとられる。しかしながら、歩行の連続運動では、各歩行相での逸脱運動が異なる歩行相にも影響するため、ある歩行相で認めた問題が麻痺側での制御の問題か、他の歩行相からの影響か、または代償的に管理しているのかを判定するのに難渋することが多い。また、問題点が複数の歩行相で生じているケースも多い。それぞれの原因によってトレーニング方法も変わるため、歩行の問題点を抽出し、どのようなトレーニング方法を選択するべきかを科学的根拠に基づいて展開することが歩行リハビリテーションの課題と考えられる。臨床的には、仮説検証を行いながら問題点のスクリーニングを行うことが多いと思われる。例えば、歩行条件を変えた場合(歩き方の教示、装具等の使用)の制御の差異を観察することで、問題点を把握できる場合も多い。また、表面筋電図を用いた神経生理学的評価も、運動学的指標だけでは捉えられない神経制御の側面を解釈する上で有用と考えられる。
本シンポジウムでは、歩行運動学および神経生理学的評価に基づいた片麻痺歩行のトレーニングについて、我々が取り組んでいる内容を発表する。
評価にあたっては、歩行観察に基づいて逸脱運動を同定し、それが歩行制御における本質的な問題になっているかどうかを判別し、トレーニング方法を決定する手続きがとられる。しかしながら、歩行の連続運動では、各歩行相での逸脱運動が異なる歩行相にも影響するため、ある歩行相で認めた問題が麻痺側での制御の問題か、他の歩行相からの影響か、または代償的に管理しているのかを判定するのに難渋することが多い。また、問題点が複数の歩行相で生じているケースも多い。それぞれの原因によってトレーニング方法も変わるため、歩行の問題点を抽出し、どのようなトレーニング方法を選択するべきかを科学的根拠に基づいて展開することが歩行リハビリテーションの課題と考えられる。臨床的には、仮説検証を行いながら問題点のスクリーニングを行うことが多いと思われる。例えば、歩行条件を変えた場合(歩き方の教示、装具等の使用)の制御の差異を観察することで、問題点を把握できる場合も多い。また、表面筋電図を用いた神経生理学的評価も、運動学的指標だけでは捉えられない神経制御の側面を解釈する上で有用と考えられる。
本シンポジウムでは、歩行運動学および神経生理学的評価に基づいた片麻痺歩行のトレーニングについて、我々が取り組んでいる内容を発表する。