[SP19-1] 神経精神疾患におけるTMSを用いた臨床研究
経頭蓋磁気刺激(TMS)はその低侵襲な脳刺激作用を筋電図や機能イメージングと組み合わせることで神経生理学的研究に利用されている。TMSを応用した神経生理学的手法には皮質興奮性を制御する神経伝達物質の機能との関連が示唆されているものがあり、統合失調症や認知症などにおいて病態研究や治療効果指標に利用されている。これまでに当教室では、GABA/グルタミン酸機能を評価する2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)やアセチルコリン機能を評価する短潜時求心性抑制(SAI)を用い、発症早期の統合失調症群における皮質内抑制の減弱と作動記憶の障害の有意な相関(Takahashi 2013)や統合失調症群におけるSAIの有意な減弱を報告してきた(Shoyama 2013)。repetitive TMSとnear-infrared spectroscopyの同時測定では、健常者において上側頭回領域を低頻度rTMS中の前頭部の酸化ヘモグロビン値の低下を計測した(高橋 2015)。2019年6月に難治性うつ病に対するrTMS治療が保険収載され、今後は病態研究だけではなくrTMSの治療研究のますますの発展が期待される。当教室では2020年10月に保険治療が可能なrTMS機器(Neurostar)が病棟に設置され、本発表の後半ではrTMS機器の導入や運用の実際についても言及したい。なお、本演題で発表する研究は実施施設の倫理委員会の承認を得て実施されている。