[SP21-2] 精神科リハビリテーションのためのfNIRS基礎研究
問診が重要な位置を占める精神科臨床においても、補助診断を目的とした検査技術の開発研究がなされてきた。我が国では、「光トポグラフィーを用いた精神疾患の鑑別診断補助」検査が、平成26年4月から保険適用となった。これは非侵襲的で低拘束である機能的近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)を用いた検査法である。この検査法では、まずは、大脳前頭前野を中心とする、語流暢課題遂行中の酸素化ヘモグロビンの濃度変化波形を求める。次に、各疾患に特徴的な4つのパターンに分類する。この検査は、トレイト・マーカー(素因)と考えられる。演者らは、従来の語流暢課題を用いたプロトコールを用いた検査と並行して、刺激課題として、前頭前野賦活作用を持ち、ルールが理解しやすく、かつ、作業量を容易に統制できるという特徴を持つ、後だし負けじゃんけん課題(drRPS)に注目した。そして、drRPSを採用したfNIRS検査を使い、反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療による経時的な活動変化を追跡する予備研究などで、ステート・マーカー(状態)としての可能性を探ってきた。併せて、作業療法領域の応用可能性を探るため、作業療法に関連した脳活動に関する研究も行ってきた。これらの研究に関連した検査を通じて、演者らは、検査に伴う馴化の問題と、限られた認知機能を持つ高齢者のための検査負担軽減の工夫に直面することになった。本講演でまずは、演者らの1)「トレイト・マーカーに関する研究」を紹介後、ステート・マーカーに関する研究として、2)「drRPSの特性を調べるための基礎研究」、3)「長期運動療法前後の脳活動をとらえた症例報告」、4)「rTMS治療中のステート・マーカーとしての臨床応用」の可能性について振り返る。さらに5)「作業療法に関連した基礎研究」について報告する。続いて、これらの研究を通して浮き彫りとなった問題のための対策として、6)「反復計測に頑健で簡便な脳機能検査法の開発の研究」、そして、7)「fNIRS検査中の検査負担の軽減に関する研究」について紹介する。これらの研究は、より低拘束なウェアラブル機器を用いているが、これは、日常作業が多用され、かつ、治療が長期にわたる、作業療法学分野における臨床応用を念頭に置いたものである。