50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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シンポジウム

シンポジウム21 作業療法学と臨床神経生理学の融合

Sat. Nov 28, 2020 3:20 PM - 4:50 PM 第5会場 (1F C-2)

座長:石井 良平(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科 臨床支援系領域)、稲富 宏之(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻)

[SP21-5] 報酬と行動練習

鈴木誠 (東京家政大学 健康科学部 リハビリテーション学科)

作業療法における行動練習では,対象者と作業療法士による1対1の不連続な試行が反復して行われる.この時,適切な行動に対提示される課題の成功や作業療法士からの称賛などが報酬となり,どのような行動が適切であるかを対象者が試行錯誤的に学習していく.そのため作業療法に際しては,いかに報酬を計画的に練習の中に組み込んで,適切な行動を強化するかという視点が重要になる.このような現状の中,近年では報酬に応じて中脳のドーパミン神経が活動し,線条体のシナプス結合を強化することが知られており,適切な行動の学習に関する基本的なメカニズムになっていると考えられている.このような神経生理学の知見を踏まえ,もし報酬に基づく行動学習を促進するための条件が分かれば,作業療法においてより効果的な行動練習ができるのではないかと思われる.そこで,報酬の提示,没収,頻度に応じた皮質脊髄興奮性の変化と,報酬を統制した行動練習の臨床的有用性について検討した.まず,報酬の提示あるいは没収に応じて皮質脊髄興奮性が変化するかどうかを検討したところ,より高い報酬確率の時に皮質脊髄興奮性が増加した.また,期待に反して報酬を没収された時にも皮質脊髄興奮性が増加した.次に,報酬頻度が皮質脊髄興奮性の大きさと変動性に影響を及ぼすかどうかを検討したところ,報酬頻度の減少に伴って皮質脊髄興奮性の大きさとランダム変動が増加した.これらの実験結果より,報酬の提示,没収,頻度に応じて行動に関与する皮質脊髄興奮性が変化することが示唆された.そこで次に,報酬を統制した行動練習の臨床的有用性について検討した.行動練習では,課題に関する手掛かりが多いと成功し,手掛かりが少ないと失敗するため,対象者の能力に応じた手掛かりを提示することによって適切な行動を強化する確率を高めることを試みた.この方法で脳血管障害を発症した対象者に行動練習を行い,行動障害の回復の程度を予測した結果,練習初回の自立度から将来の自立可否を予測できることが示唆された.また,作業療法の臨床において個人への練習効果を推定する際には,対象者の行動を一定期間システマティックに反復測定して,ベースライン期と介入期のデータを比較する方法が用いられている.そこで,ベースライン期のデータ変動と介入期のデータ変化に応じた統計学的検定力をシミュレーションにより検討した.その結果,ロジスティックモデルにベースライン期のデータ変動を代入することによって,介入期のデータ変化に応じた有意差の出現確率を推定できることが示唆された.