[SP3-1] 神経生理検査における医師と検査技師の連携（技師はどこまでするべきか）
●はじめに：生理学的検査は生体に対して直接行うため，医師と臨床検査技師の両者が介入する分野である．したがって臨床検査技師は，医師と十分な信頼の上で，精度の高い検査記録を報告する責任があり，相応の知識と技術が要求される．神経生理検査は神経や筋の活動を電気現象として捉え，生体の機能を推測し，診断や障害の評価，治療などへの役立てることを目的とする．しかし，得られるデータは技術に大きく依存し，信頼性の高いデータを得るには神経生理学のみならず，電気工学的な知識や技術も必要とされる．●脳波検査；脳の電気活動を記録し，てんかんやその他脳疾患の診断，予後判定などに有用である．また，法的脳死判定に必須であり，その重要性は高い． 臨床検査技師の役割は，アーチファクトの排除を行い，判読に耐えうる波形と依頼医師の目的を把握した報告をすることが重要である．また，記録をスムーズに行うことは大切であるが，判読に対する努力も怠ってはならない．そうすることで臨床的知識が得られるとともに医師との信頼関係を築くことができる．●神経伝導検査：末梢神経の伝導状態を評価することにより，その病態生理学的な背景を推定し，臨床診断の一助とする． 臨床検査技師の役割は，依頼項目を把握し，アーチファクト対策を施して波形を記録する．また，神経伝導検査は，疾患や病態によって多くの神経を検査する必要があり，いわゆるルーチンの手技は成り立たない．そのため，確実な解剖および神経生理学的知識や検査技術の習得などが求められる．また，被検者の協力が不可欠な検査であり，医師とインフォームドコンセントを確認することも臨床検査技師の重要な役割である．●大脳誘発電位検査：種々の感覚刺激が受容器に入力されてから，大脳皮質に到達するまでの部位で記録される一過性の電位変動の検査である．検査は脳神経外科，小児科などで広く用いられ，術中モニタリングに利用されていることは特筆すべきである． 臨床検査技師の役割は，微小な電位であり，アーチファクト対策が極めて重要である． ●検査依頼からレポート作成：検査担当者は依頼検査項目に基づき，既往歴，臨床症状，理学所見等の検査に必要な情報を収集し，不明な点は医師に確認する．これらの情報収集は，実際の検査記録時以外に，後のレポート作成においても重要となる．●おわりに：神経生理検査における精度や信頼性は，検査担当者の知識と技術に大きく依存する．医師の依頼を単にマニュアル通りに実施するのではなく，依頼された検査によって「何がわかるのか？」を把握し，さらに依頼の目的「何を知りたいのか？どのような情報を望んでいるのか？」を十分理解した上で検査をすることが大切である．