日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム3 神経生理検査における医師と検査技師の連携(技師はどこまでするべきか)

2020年11月26日(木) 10:00 〜 11:30 第5会場 (1F C-2)

座長:幸原 伸夫(神戸市立医療センター中央市民病院)、高橋 修(慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室/済生会東神奈川リハビリテーション病院)

[SP3-5] 医師と技師の役割分担;一般病院に働く脳神経内科医の立場から

幸原伸夫 (神戸市立医療センター中央市民病院)

技師は伝導検査や誘発電位、神経筋超音波の検査技術の通常の検査に関してはプロフェッショナルであり、医師以上に正確で再現性のある記録ができる。病態の基本や正常値を理解しレポートに検査結果と問題点記載することができる。
医師は臨床症状から問題点を整理して診断や鑑別のために必要で適切な検査計画をたて、その検査結果を患者の症状と照合して病態を推定できる能力を有し、レポートに臨床的な判断結果を記載することができる。両者はコミュニケーションをとりあって切磋琢磨し技術と知識のレベルをより高いものにしていく。これが理想的な技師と医師の役割、関係と考えます。
大学病院のように医師がほとんどのことをする施設は例外で、一般病院では医師は多くの日常業務の中で検査ができる時間も限られ、自分でできる検査件数は多くありません。神経伝導検査、誘発電位、神経筋超音波検査は末梢神経や脊髄、筋疾患の診断に欠かせない検査ですが、誘発電位や手根管などの頻度の高い圧迫性ニューロパチーやポリニューロパチーなどは、検査方法が定型的ですのでルーチン検査として完全に技師に任せています。結果をみてそれ以上の検査が必要な時には針筋電図を含めて医師が再検することにより、より多くの患者の評価をすることが可能になります。医師は最終的な判断をするわけですが、私は非典型の症例やテクニカルな問題があった場合には必ずフィードバックすることとしています。このことにより確実に技師の理解は深まり、ますます面白くなり、次の検査で役立つからです。針筋電図だけは医師がしなければなりませんが、その他のことは両者に境界があるわけではないので、技師が医師に技術指導することも普通に行われるような環境や意識を形成することが大切と考えています。技師は検査のプロでなくてはならないですが、医師は必ずしも検査に習熟、理解している訳ではないのが実情だからです。また検査の意味を十分理解していない医師から見当外れのオーダーが出ることもあると思いますが、患者さんにとって無駄な検査は省き必要な検査が出来るような配慮をすることができることは大切です。研鑽を積み、考えながら検査が出来るようになれば、検査している過程で追加検査が必要と判断することも容易になります。このような前向きの技師と切磋琢磨しながら働くことのできる環境は素晴らしいと思います。