[SP5-1] 小児の脳機能評価におけるresearchおよびclinical toolとしての脳波
患者の検査として脳波を用いる場合に、臨床研究researchとして用いるのか臨床検査clinical toolとして用いるのかの境界は必ずしも明確ではない。検査法や評価法が汎用性を持って多くの医療機関で可能なのか、診断や治療方針の決定など診療目的に用いられるのかなどが研究と診療の区別の指標になるであろう。ただし、当初は研究で用いられた手法が様々な評価を経て汎用性を持った臨床検査の方法となっていくことも経験する。ここでは、小児で行われる脳波検査において研究からclinical toolとして確立されてきた、または確立していく可能性のある手法について考察する。amplitude-integrated EEG(aEEG)はすでに新生児領域で広く発作検出の臨床目的で使われるようになっている。さらに小児期に発症する急性脳症のICU脳波モニタリングでもaEEGやdense spectral arrayなどの脳波トレンドグラムが用いられている。現在は発作の検出が主目的であるが、背景活動の評価や予後予測など広い目的で用いられるようになることが期待される。通常の脳波判読では評価が困難な高周波律動の評価も、デジタル脳波の普及に伴い用いられるようになった手法の代表である。頭蓋内脳波のみならず頭皮脳波でも評価され、小児の脳波でも報告がされている。臨床的な意義、診断・診療方針への適応の確立と合わせて、汎用性を持ったソフトウェアの普及や評価法などがclinical toolになるために必要と考える。脳波を他のモダリティと組み合わせることも脳波の新しい活用法である。脳波-機能的MRI同時記録は、脳波活動に伴う血流変化によるBOLD(Blood Oxygen Level Dependent)の変化をMRIで可視化することでてんかん焦点の同定やてんかんに関わる脳内ネットワークの解明に用いられる。臨床的な有用性も報告されてきているが、広く普及するには機材の汎用化と合わせてハード、ソフト両面のサポートの充実が必要である。脳波を機能的near-infrared spectroscopy(NIRS)と同時計測することで脳活動を評価する方法も新生児分野で試みられている。