日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム7 ミスマッチ陰性電位の精神科臨床応用

2020年11月26日(木) 14:40 〜 16:10 第6会場 (2F I)

座長:志賀 哲也(福島県立医科大学神経精神医学講座)、住吉 太幹(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部)

[SP7-1] 統合失調症のMMN

荒木剛, 切原賢治, 永井達哉, 多田真理子, 臼井香, 藤岡真生, 越山太輔, 笠井清登 (東京大学 医学部 附属病院 精神神経科)

統合失調症は、思春期に発症し、陽性症状・陰性症状・認知機能障害を主症状とする精神疾患である。診断は症状や観察に基づくが、生物学的基盤による評価方法はまだ見つかっていない。
これまで脳画像研究から、統合失調症初回エピソード患者において上側頭回の灰白質体積に進行性減少を認めた。このような進行性脳病態が明らかになり、さらに臨床生理学的研究により、その変化は、同部位を発生源とする事象関連電位の聴覚ミスマッチ陰性電位(MMN:mismatch negativity)の進行性振幅減衰の変化を伴っていた。MMNの発生に NMDA受容体が関与しており、グルタミン酸神経伝達系と密接な関係があることが知られており、これまで知られていた統合失調症の脳病態仮説の神経発達障害仮説やドーパミン系仮説に加えて、進行性脳病態仮説やグルタミン酸系仮説が関与していることが明らかとなった。
その後、発症年齢前後の支援の重要性が臨床的にも明らかとなり、さらには発症前のリスク群を超ハイリスク状態(ultra-high risk UHR)と定義して、生物学的研究が進められるようになった。
今回、我々は、東大精神科で行っているリスク群や初発群を重点的に治療をおこなう「こころのリスク外来」を中心としておこなわれてきた、リスク群・統合失調症初発群の縦断研究における事象関連電位研究について報告する。また同課題を用いた動物基礎研究を簡単に紹介し、translatable brain markersになりうるかどうか、を検証していきたい。