日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

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シンポジウム

シンポジウム8 こんなに使えるF波:リハビリテーション医学の視点、神経内科学の視点

2020年11月26日(木) 14:40 〜 16:10 第7会場 (2F J)

座長:小森 哲夫(国立病院機構箱根病院 神経筋・難病医療センター)、原 元彦(帝京大学溝口病院 リハビリテーション科)

[SP8-2] リハビリテーション科領域における反復F波

蜂須賀明子1, 阿部達哉2, 小森哲夫2, 佐伯覚1 (1.産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座, 2.国立病院機構 箱根病院 神経内科)

1.はじめに
反復F波は、潜時・振幅・波形が同一なF波である。筋萎縮性側索硬化症を含む運動ニューロン疾患、ギラン・バレー症候群、手根管症候群などで反復F波の出現が報告されるが、その意義は明らかでない。我々は、脊髄前角細胞障害を呈するポリオと手根管症候群において、反復F波の特徴を検討した。
2.ポリオにおける反復F波
対象はポリオ罹患者(ポリオ)43名(男性25名, 女性18名, 59.6±5.6歳, 年齢及び身長を適合した健常コントロール(健常)20名(男性8名, 女性12名, 60.8±4.5歳)。それぞれ正中神経および脛骨神経の運動神経伝導検査、F波、MUNEを計測した。ポリオにおいてM波振幅低下、F波出現率低下(正中:60.7±27.5,79.5±14.9,脛骨:84.4±28.1,100.0±0.0(ポリオ、健常))、反復F波占拠率(反復F波数/F波総数x100)の増加(正中:41.3±26.6,10.6±7.4,脛骨:27.9±31.8,0.6±1.6)、MUNE減少(正中:66.9±84.4,224.1±63.4,脛骨:186.7±184.8,387.4±151.0)を認めた。また、反復F波占拠率はMUNEと負の相関を認めた。反復F波は、非反復F波と比較して潜時が遅く高振幅であった。臨床所見との関係は、ポリオ臨床重症度に応じてまず反復F 波が増加し、次いでF 波出現率の低下を認めた。
3.手根管症候群における反復F波
対象は手根管症候群(CTS)17手(moderate or severe, Padua et al. 1997)(女性12名,平均年齢65.1±8.6歳)と上肢長を適合した健常コントロール40手(男性8名,女性12名,60.8±4.5歳)。それぞれ正中神経の神経伝導検査、F波、MUNEを計測した。またCTSでは、正中神経の感覚神経伝導検査、Boston Carpal Tunnel Questionnaire(BCTQ)、 Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand、 Semmes-Weinstein monofilament set(SW-test)、 2-point discrimination(2PD)、ピンチ力を評価した。CTSにおいて、遠位潜時遅延、F波最短潜時遅延、F波伝導速度低下、反復F波占拠率増加(CTS 30.6±27.5%,健常10.6±7.4%)、MUNE減少(CTS 119.5±60.9,健常 224.1±63.4)を認めた。一方、F波出現率は有意差がなかった。また反復F波占拠率とF波平均振幅の相関を認めたが、MUNEと相関はなかった。臨床所見との関係は、反復F波と明らかな相関はなく、BCTQ(function)、SW-test、2PDと遠位潜時およびF波最短潜時に相関を認めた。
4.反復F波と臨床応用
反復F波の出現は、運動単位数減少や脊髄前角細胞の興奮性亢進との関連が推察される。反復F波による新しい機能評価、リハビリテーション訓練を含む治療指標として臨床応用の可能性を探索中である。本シンポジウムでは症例を含めて紹介する。