[SP9-4] 頭蓋内脳波(高周波・低周波成分)
頭蓋内脳波において、てんかん発作時にみとめられる従来の脳波パターン(棘徐波の規則的な群発や律動波形が時間経過とともにevolutionしていく)に比し、発作時のγ~高周波振動や低周波成分は時間的に先行したり、より狭い範囲に認められたりすることが多いため、seizure onset zoneのより正確な決定に有用ではないかと考えられている。発作時高周波振動は錐体ニューロンの異常な活動電位の群発を反映し、低周波成分はニューロン周囲のグリアが関与したイオン濃度の変化を反映していると推測されている。高周波振動に比べ、低周波成分の方が発作時脳波における出現率がやや高いと報告されているが、一方のみ出現することも少なくないため、両者を相補的に活用するのがよいと思われる。高周波振動の記録には十分に高いサンプリング周波数を要し、そのため高速な電極ボックス(アンプとA/D変換器)、コンピュータと大容量記憶装置が必要である。低周波成分の記録にはアナログフィルタ部の低域遮断フィルタ(DCフィルタ)のカットオフ周波数を充分低くする必要がある。最近は高速なデジタル脳波計が市販されているため、両者の同時記録が可能なwideband記録が行われることが多い。脳波の視察による判読で高周波振動を探す際には、高域遮断フィルタをオフ、低域遮断フィルタのカットオフ周波数を充分高く設定して徐波成分を減衰させ、感度を上げて脳波を時間軸方向に引き延ばす(0.5~2秒/ページ)必要がある。コンピュータによる時間周波数解析を行い、高周波帯域の「バンド」を探すと見つけやすい。高周波帯域は通常の脳波帯域に比べて振幅が低いため、発作前の一定区間をベースラインとしたパワーの変化率で表示すると高周波帯域における変化が見えやすくなる。一方、視察で低周波成分を探す際には、低域遮断フィルタをオフ、高域遮断フィルタを必要に応じて低めに設定し、脳波を時間軸方向に縮める(30~60秒/ページ)とよい。いくつかの発作時脳波で検討し、再現性を確認することが必要である。従来の発作時脳波判読に加え、これらの成分も含めて検討することで、焦点切除術の発作抑制成績が改善されるものと期待されている。本公演では、当方で経験したてんかん外科症例の中で、発作時高周波・低周波成分に注目した解析についていくつか紹介する。