50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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サテライトシンポジウム

サテライトシンポジウム1 磁気刺激の臨床応用と安全性に関する研究会

Thu. Nov 26, 2020 6:30 PM - 8:30 PM 第2会場 (2F B-1)

座長:藤原 俊之(順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学)

[SS1-4] 文献レビュー 2020

代田悠一郎 (東京大学 医学部附属病院 検査部)

経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation, TMS)に関連して発表された論文数は、ここ数年1300-1500報/年程度で推移している。2000年台のような急激な論文数増加は見られなくなった半面、一定数の論文が安定して発表されている印象である。内容面からは、一次運動野など運動機能に関連する脳部位を刺激対象とした研究が引き続きボリュームゾーンであることがうかがわれる反面、研究分野に広がりもみられている。特に、治療研究においては、精神科領域でのシャム対照二重盲検試験(RCT)やメタアナリシスが増加している。一部を取り上げ解説する。安全性に関連して、アメリカ食品医薬品局(FDA)のneuromodulation devicesに対する考え方を示す記事が発表された(Neuromodulation 23:3-9, 2020)。我が国における非侵襲的脳刺激装置の薬事承認・保険収載などにも一定の影響を及ぼす可能性がある。これまでの安全性に関する報告は主に健常成人を対象としたものであったが、カナダより豊富な経験に基づく小児TMS・tDCS(経頭蓋直流電流刺激)の安全性に関する報告があった(Brain Stimulation 13:565-575, 2020)。単一施設からの報告であるため、より一般化可能な研究成果が待たれる。小児科領域では、動脈管閉鎖デバイスを有する二例で安全にTMSが行えたとする報告がなされた(Brain Stimulation 13:861-862, 2020)。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)はさまざまな神経・精神疾患に対する治療応用が試みられているが、刺激パラメータによってはけいれん誘発などの合併症が懸念される。また妊婦へのrTMSが胎児に与える影響は不明である。本年、妊婦に対しrTMSをてんかん治療の一環として安全かつ有効に行なえ、児にも一歳(発表時)に至るまで明らかな異常を認めなかったとの症例報告が発表され、関連する文献が要約されている(J Clin Neurophysiol 37:164-169, 2020)。被験者のみならず検査者の安全面にも注意が払われるようになっている。TMSコイルを手で保持する際の電磁界暴露が職業安全上許容されるかどうか、国際非電離放射線防護委員会の基準を参照したシミュレーション研究がなされた(Med Biol Eng Comput 58:249-256, 2020)。医療上の必要性に鑑み電磁界暴露は許容範囲であるものの、リスク・ベネフィットに配慮することが必要と結論付けられている。以上のように、TMSなど非侵襲的脳刺激法の分野はいまだ発展途上といえ、安全性に配慮しつつもさらに研究を推進する必要があると考えられる。