日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

サテライトシンポジウム

サテライトシンポジウム2 小児脳機能研究会

2020年11月26日(木) 18:30 〜 20:30 第3会場 (2F B-2)

座長:安原 昭博(安原こどもクリニック)、荒木 敦(中野小児病院)

[SS2-2] 小児薬剤抵抗性てんかんにおける皮質下白質のグリア系細胞の神経病理学検索

佐久間悟1, 小野智憲2, 本田涼子3, 宇田武弘4, 伊東正博5, 大坪宏6 (1.大阪市立大学大学院 医学研究科 発達小児医学, 2.長崎医療センター 脳神経外科, 3.長崎医療センター 小児科, 4.大阪市立大学大学院 医学研究科 脳神経外科学, 5.長崎医療センター 病理診断科, 6.トロント小児病院 神経科)

【目的】薬剤抵抗性の大脳皮質てんかんは、発作起始部からてんかん性放電が広く伝播し、持続することでてんかん原性領域が進展していく。薬剤抵抗性てんかんでReactive oligodendrocyte(ROC)が増加することが報告されている。異常なオリゴデンドログリアにより構築される脳内ネットワークを解明することを目的とする。【方法】対象は、皮質切除術を行った0歳から19歳までの薬剤抵抗性てんかん罹患例。外科手術切除脳組織から得られたパラフィン包埋組織切片を用いて、LFB-HE染色と抗NeuN, GFAP, Olig2, NG2, O4, MBP, filamin A, alpha B crystallin抗体を用いて免疫組織染色を行った。また、頭皮及び頭蓋内脳波検査により同定したてんかん焦点領域と周辺領域との組織像を比較した。【結果】手術時年齢4歳~16歳の4例(男性1例:女性3例)。発作型は、焦点起始発作4例(焦点意識減損発作1例、焦点起始両側強直間代発作3例)、病理診断は、Focal cortical dysplasia(FCD)Type IIb 2例、Hippocampal sclerosis(HS)2例。全症例でROCの核にOlig2は発現し増加を認め、白質>皮質であった。発現の弱い細胞と強い細胞が混在し、焦点中心領域と周辺領域とに著明な差異は確認できなかった。形態的に概ね円形であったが、一部に歪んだ形態を持つ細胞を認めた。filamin Aは、症例1の焦点領域の皮質において、bizarre glial cells、balloon cells(BCs)の細胞質に発現が増加、周辺領域では皮質の少数のグリア系細胞に軽度発現した。症例2においてfilamin Aは皮質、白質いずれにも発現を認めなかった。症例3の焦点中心領域、及び周辺領域の皮質、及び、症例4における焦点中心領域の皮質において、filamin Aは形態的に突起を持ち、肥厚したastrocyteの細胞質に弱く発現した。白質においては、dysmorphic neuron(DN)及び, BCsの細胞質に発現した。症例4の周辺領域においては集簇したROCの細胞質に軽度発現し、白質>皮質であった。α-B-crystallinは、症例1及び3において、焦点中心領域の皮質のbizarre glial cells、BCsの細胞質に発現し、症例1の周辺領域、及び症例2,4でROCの細胞質に白質>皮質に発現した。NG2抗体及びO4抗体に対してROC、astrocyte、DNとBCはいずれも免疫応答を認めなかった。【結論】ストレスタンパク質であるα-B-crystallinは、Olig2陽性細胞と形態的に類似した細胞において免疫反応を示した。Olig2に免疫反応を示すROCは、強いストレス下でα-B-crystallinが何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。