[SS2-5] 難治性てんかんに対する脳梁離断術後に二期的に焦点切除術を施行した38例についての検討
【背景】脳梁離断(CC)は切除手術の適応のない難治性てんかんの患者に対して行われる緩和的手術のひとつである。一定の発作抑制効果が期待できるが、その機序としててんかんにおける脳梁の役割、すなわち焦点性のてんかん放電の一側半球から対側への伝播や、大脳半球間のてんかん活動の同期性の調整などとの関連が想定されている。一方、術後の脳波検査ではしばしば限局性または側方性のてんかん性放電が確認され、CCの診断的価値についても指摘されており、二期的な焦点切除術の報告もみられる。【目的】CC後に二期的に焦点切除術を施行した症例の発作予後および予後を規定する因子について検討する。【対象と方法】2000年1月から2014年12月31日の15年間に国立病院機構長崎医療センターにてCCを施行し、その後二期的に焦点切除術を施行した症例のうち、最終手術から1年以上のフォローアップが可能であった38例(男性18例、女性20例)を対象とした。平均発症月齢は27.4か月、平均CC時月齢は72.2か月、平均初回切除術時月齢は93.9か月、平均最終切除術時月齢は101.9か月。平均切除術回数は1.2回、CCから初回切除術までの平均期間は21.2か月、最終手術までの期間は29.1か月。平均フォローアップ期間は72.0か月であった。対象患者の最終的な発作予後および予後規定因子について、診療録を用いて後方視的に検討を行った。発作予後についてはEngel’s classificationを用いて評価した。【結果】全体の発作予後について、Engel Class Iは19例(50%)、Class IIが2例(5.2%)、Class IIIが13例(34.2%)、Class IVが4例(10.5%)であった。焦点切除術の術式は半球離断術(HS)が5例、中心部温存半球離断術(ST-HS)が7例、後方1/4離断術(PQT)が9例、前頭葉切除/離断(FR)が16例、後頭葉切除(OR)が1人であった。各術式における最終的な発作予後について、Engel Class Iの患者がHSでは4例(80%)、ST-HSで6例(85.7%)、PQTで3例(33.3%)、FRで5例(31.3%)、ORは1例(100%)で、ORを除けばHS、ST-HSでの発作消失率が高かった。発作消失例ではCC後に脳波異常および機能画像検査での側方性が一致した症例が優位に多かった。【考察】CC後に二期的に焦点切除術を施行した症例のうち、半数以上でEngel Class II以上の良好な発作予後が得られた。CC後に脳波あるいは画像検査での側方化が得られ、その側方性が一致する症例がより良好な発作予後を得られるようである。CCによって脳内の異常なてんかん性ネットワークに変化が生じることがその要因と考える。