[WS2-2] てんかんセンターにおけるオンライン診療
【包括的診療と遠隔医療】我々は「包括的てんかん診療」を目指してきた。これは4つの垣根、すなわち「年齢」「治療法」「診療科」「職種」を超えて一体となる診療体制である。遠隔医療はアクセスが困難な患者に専門医療を提供する手段であり、第5の垣根として「距離」の制約を解消するポテンシャルをもっている。てんかん診療は問診による診断と、その結果に基づく薬物療法が主体をなす。遠く離れていてもビデオチャットによる問診は可能である。脳波、 脳画像などの検査も重要であるが、毎回、実施するわけではない。この点で、てんかんは遠隔医療に適している。【オンライン診療】患者と医師がビデオチャットを通じてリアルタイムに情報交換を行う診察はオンライン診療とよばれる。オンライン診療は通院が困難な患者の医学的管理を補完する役割を担っており、外来、入院、訪問診療に続く第4の診療形態として、今後の発展が期待されている。2018年3月の診療報酬改定で「オンライン診療料」が新設され、てんかん患者に算定が可能となった。聖隷浜松病院てんかんセンターでは2019 年 6 月に「オンライン専門外来」(自由診療)を開設した。2020年9月時点での実績は2~26歳の15例である。このうち2例は海外在留邦人であった。国内患者の居住地は浜松市から直線距離220~1350kmであった。患者はスマートフォンまたはPC、病院側はPCを用い、ビデオチャットで面談を行った。紹介状、検査データ、問診票を利用して事前に院内カンファレンスを実施し、その内容に基づいて患者に説明を行った。受診理由は 1)てんかんの診断、2)内科的治療選択、3)てんかん外科適応判断であった(重複あり)。15例中8例で外科治療適応ありと判断し、後日、てんかん外科医がオンラインで手術説明を行った。現在、4例が手術実施、4例が待機中である。【遠隔医療の多様性】基本型となるDoctor to Patient(D to P)では医師と患者はビデオチャットを通じて対面診療と遜色ない情報交換が可能である。患者と先方の主治医が同席するD to P with Dでは、診療方針に対する主治医の理解が深まる。また、D to Pの後、かかりつけ病院で入院加療を受けたケースでは、入院中のデータを元に当院から方針を提案し、治療が進められた。これはD to D to Pの形態である。【結語】通院に要する長距離の移動は「交通費」「時間」の負担が大きい。発作が頻回な患者は公共交通機関での移動を躊躇している。これらの制約でアクセスできない患者へ専門医療を提供する機会として、オンライン診療は有用である。アクセス困難な患者の実態を把握し、そこから問題点を抽出し、今後の発展に向けて診療体制を見直していく試みとして、遠隔医療のあり方をさらに研究していく必要がある。
本演題の一部を論文に発表した(てんかん研究. 2020:38:12-18)。
本演題の一部を論文に発表した(てんかん研究. 2020:38:12-18)。