日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

ワークショップ

ワークショップ5 症例から学ぶ脳波のピットフォール

2020年11月27日(金) 10:00 〜 11:30 第4会場 (1F C-1)

座長:飛松 省三(福岡国際医療福祉大学・医療学部・視能訓練学科)、池田 昭夫(京都大学 医学研究科 てんかん・運動異常生理学講座)

[WS5-3] やっぱり発作時脳波が大切

寺田清人1,2 (1.てんかんと発達の横浜みのる神経クリニック, 2.NHO静岡てんかん・神経医療センター)

てんかんの診療では病歴が最も重要であり、発作の様子や発作を生じるようになった背景を明らかにすることでてんかん診断が可能となる。その診療の過程において、発作間欠期脳波やMRIなどの神経画像は病歴を補う情報を提供することができるため、てんかん診療の初期段階において検査されることが多い。例えば、初回の強直間代発作で開始時点の症状が不明であった場合(起始不明強直間代発作)、脳波で焦点性の発作間欠期てんかん性放電(Interictal Epileptiform Discharge: IED)が見られた場合には焦点てんかんが示唆され、脳波で全般性のIEDが見られた場合には全般てんかんが示唆される。一方、発作時脳波は、臨床の場では外科的治療の検討のための長期脳波ビデオ同時記録検査で記録されることが多い。てんかんのある人の約6割は適切に選択された抗発作薬で発作が抑制されるが、抑制されない場合は薬剤抵抗性てんかんと判断される。薬剤抵抗性てんかんでは外科的治療を検討するが、その場合には、てんかん原性領域の確認、発作型の確認、複数の発作がないかどうかの確認などのため、長期脳波ビデオ同時記録検査で発作時脳波の確認が行われることになる。一方、てんかんのある人でも外来でのルーチン脳波ではIEDが見られない場合も多く、時に正確なてんかん診断が困難なまま治療を開始しなければならないこともある。この様な状況で治療が奏功しない場合には、てんかん診断を再考する必要があるが、このような場合にも発作時脳波が有用となることがある。さらに、IEDが記録された場合でも、発作型とIEDが矛盾した場合にも発作時脳波が病態の把握に有用な情報を提供する可能性がある。本講演では発作時脳波が有用であったいくつかの症例について脳波を供覧しつつ検討する。