50th Memorial Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Neurophysiology (JSCN)

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ワークショップ

ワークショップ6 経頭蓋電磁気刺激の現状と課題

Sat. Nov 28, 2020 8:30 AM - 10:00 AM 第6会場 (2F I)

座長:後藤 純信(国際医療福祉大学 医学部 生理学講座)、緒方 勝也(国際医療福祉大学 福岡薬学部 薬学科)

[WS6-3] 経頭蓋磁気刺激および脳刺激法の未来について

寺尾安生 (杏林大学医学部病態生理)

経頭蓋磁気刺激法(TMS)は1985年イギリスのBarkerにより開発されてから35年が経過し、脳科学のみならず、脳神経内科・精神科・脳神経外科領域の研究においても広く応用されるようになった。この発表ではこれまでのTMS研究の発展を振り返り、研究の現在の動向と未来について考察する。初期の研究では運動野刺激の他、脊髄神経根、さらに錐体交叉部刺激法など痛みのない刺激として臨床的に運動中枢路の機能を調べる方法として発展した。二発刺激による大脳皮質、小脳刺激法、transcallosal inhibitionなど大脳皮質の興奮性の機序や脳領域同志のconnectivityを調べる手法も発見された。その一方で、virtual lesion法を用いた神経心理学的研究などにも応用されようになっている。1995年連続磁気刺激法(rTMS)がうつ病の治療として発表されるとともに、脳の可塑性を変化させるという新たな側面がTMSの研究に加わった。定頻度のrTMSのみならず、2000年台にはいりTheta-burst stimulation(TBS), Quadripulse stimulation(QPS), Paired associative stimulation(PAS)など脳の可塑性を変化させる新しいneuromodulationの手法が相次いで発表され、rTMSの研究はさらに大きく発展した。様々な神経機能画像との組み合わせで、脳のconnectivity、plasticityを研究する手法として神経科学にも大きく貢献した他、うつ病の治療、単独であるいはリハビリテーションと組み合わせて脳卒中その他の様々な神経疾患治療など臨床面での応用も広がりをみせている。脳の刺激のみならず、脊髄でのrTMSも排尿障害、歩行障害の治療に臨床効果を期待されている。今や非侵襲的脳刺激法として標準的になった一方で、深部に刺激が届きづらく、刺激が局所に限局しづらい点など今後の進歩が期待される部分もある。最後にイギリスで開発された超音波の音響エネルギーを使用して神経を非侵襲的に刺激する新しい手法である、経頭蓋集束超音波刺激(tFUS)についても紹介する。刺激の起きる機序はまだ十分わかっていないが、超音波を集束させることにより脳の限局した部位、皮質のみならず視床などの深部の構造も刺激できneuromodulationの新たな手法として期待されている。