セッション情報
シンポジウム
シンポジウム 2 職業がんをメカニズムから考える
2023年5月10日(水) 15:45 〜 17:45 第2会場 (ライトキューブ宇都宮 3F 中ホール東)
座長: 市原 佐保子(自治医科大学医学部環境予防医学講座), 堀内 正久(鹿児島大学医歯学総合研究科衛生学・健康増進医学)
【医(専)、看】
国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類は、ヒトでのがんの証拠(疫学研究)、実験動物でのがんの証拠、発がんメカニズムの証拠の強さに基づき設定される。IARC発がん性分類で、ヒトに対して発がん性がある(グループ1)に分類されている作用因子の相当数が、職業的にヒトが曝露される物質である。イギリスの産業革命期、パーシヴァル・ポット医師が煙突掃除人の陰嚢がんを記述して以来、多くの職業がんが報告されてきたが、我が国においては戦後の法整備と関係者の努力によって職場環境が改善され、因果関係が明確な典型的な職業がん症例は減少したように見えた。ところが、尼崎市における工場労働者ならびに工場周辺住民に多発した胸膜中皮腫、大阪市のオフセット校正印刷工場で多発した胆管がん、福井県の化学工場で発生した膀胱がんなど、従来から知られていた職業がんと同時に新しい職業がんの発生が立て続けに報告され、これらが職業がん対策の重要性を再認識させた。職業がんの疫学研究と産業化学物質による発がんのメカニズムの解明の必要性が改めて求められている。
本シンポジウムでは、職業がんをメカニズムから考える、をテーマに、4名の専門家に学術的視点からご講演いただく。
はじめに、市原学先生(東京理科大学教授)に、印刷事業場で発生した胆管がんに関し、疫学研究、症例研究や実験動物・細胞共培養システムを用いた研究に基づき、1,2-ジクロロプロパンによる胆管がん誘導機構をご紹介いただく。次に、鰐渕英機先生(大阪公立大学教授)には、芳香族アミン取り扱い従業者の膀胱がんの臨床病理学的研究と動物モデルを用いた2-メチルアセトアセトアニリドによる膀胱がん発生メカニズムをご紹介いただく。さらに、豊國伸哉先生(名古屋大学教授)に、発がん機構における過剰鉄の関与とフェロトーシス抵抗性の分子機構に関する話題を中心に、細胞外微細繊維によるがん発生のメカニズムをご紹介いただき、その予防法を考える。最後に、高橋将文先生(自治医科大学教授)に、アスベスト肺、珪肺症での炎症に関与するインフラマソーム(Inflammasome)と呼ばれる自然炎症を介した生活習慣病の病態形成における分子基盤につき、ご講演していただく。平工雄介先生(福井大学教授)には、ご自身の長年にわたる発がんの分子メカニズムに関する研究実績を基に発言していただき、職業がん対策の今後の課題と展望について議論する。また、発がんメカニズムを解明する上での実験研究の役割についても議論する場としたい。
市原 学1 (1.東京理科大学)
鰐渕 英機1 (1.大阪公立大学大学院医学研究科 分子病理学)
豊國 伸哉1 (1.名古屋大学大学院医学系研究科)
高橋 将文1 (1.自治医科大学 分子病態治療研究センター 炎症・免疫研究部)
平工 雄介1 (1.福井大学学術研究院医学系部門環境保健学分野)