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シンポジウム
シンポジウム 5 今こそ産業保健に求められる職域のがん対策
Wed. May 10, 2023 3:45 PM - 5:45 PM 第3会場 (ライトキューブ宇都宮 3F 中ホール西)
座長: 祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科), 中川 恵一(東京大学大学院医学系研究科)
【医(専)、看】
業務起因性の疾病予防を目的とする労働安全衛生法(安衛法)を根拠法とする産業医、産業保健職の活動において、職域におけるがん対策は、「がんは私傷病」という理由で産業保健の主な職務として認知されてこなかった。がん検診結果の職場での入手は法定外項目という枠組みで、安全配慮義務範囲拡大を危惧する主張を良く耳にする。一方で、がんは、在職者死亡の常に一位で約50%を占めており、65才までに15%が罹患する疾患である。健康経営やコラボヘルスが進む中で、職域でのがん対策は経営面から見ても大きなメリットがあると考えられる。
又、安衛法は今年より化学物質の自律的管理へと大きく舵を切った。特に遅延性健康障害の代表である「がん」については、その集積性の有無を監視する必要がある。化学物質だけでなくテレワークでの座位時間の増加と大腸がんの関連、夜勤労働者と乳がんとの関連等これらは多くの知見が集積してきていることから、労働環境の違いからのがん罹患の変化を見ていく必要もある。
がん対策には一次、二次、三次とあり、三次予防の「仕事と治療の両立支援」にこれまでフォーカスが当てられてきた。しかし両立支援を根付かせるには、基本、一次、二次対策と深く関連する。特に二次対策としてのがん検診はこれまで「福利厚生」という位置づけであり「機会の提供」であった。多数の検査を補助することが社員サービスと考えらており腫瘍マーカーやPET-CTなどの網羅的な検診を補助する場合も多かった。
がん検診を職場でのがん対策と位置づけた場合には、「科学的根拠のあるがん検診項目が選択され、結果の検証を行う精度管理」を行って初めて効果が期待できる。しかし職域の誰もが「精度管理する」という用語について根本的な意味が理解されていないのが現状である。
これらの様々な課題について「今こそ産業保健に求められる職域のがん対策」と題して、当シンポジウムを企画した。3月末に発出される第4期がん対策推進基本計画に、職域でのがん対策の重要性が盛り込まれていることから、冒頭基本計画の概要を厚労省担当技官より説明して頂き、13年以上にわたり職域でのがん検診の普及活動の中心的役割を担ってきたがん対策推進企業アクションの活動の実績の紹介と、その中で、中小企業でのがん検診の普及について貴重な知見が得られたので調査結果を紹介する。がん検診の精査勧奨については、職域での健康情報の取り扱いが不可欠であることから、情報取り扱いの論点を提示したい。さらに、精度管理は企業毎や事業所毎では困難で、基本的に健保組合ベースでのレセプトで実施することが効率的であり容易であることの紹介を行い、「職域でのがん検診のあり方」についてまとめることとした。最後に討論する時間を設けたので、会場からの積極的な発言を期待するものである。
原澤 朋史1 (1.厚生労働省健康局がん・疾病対策課)
中川 恵一1 (1.東京大学大学院医学系研究科)
南谷 優成1 (1.東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座)
立道 昌幸1 (1.東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学)
小川 俊夫1 (1.摂南大学)
祖父江 友孝1 (1.大阪大学大学院医学系研究科)