セッション情報
シンポジウム
シンポジウム 7 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版を産業保健現場にいかに生かしていくか?
2023年5月10日(水) 15:45 〜 17:45 第4会場 (ライトキューブ宇都宮 2F 大会議室201)
座長: 廣部 一彦((有)阪神労働衛生コンサルタント), 土肥 誠太郎((株)MOANA土肥産業医事務所/産業医科大学)
【看】※日本医師会単位は付与対象外となりました
共催:日本動脈硬化学会
脳血管疾患・心疾患は40歳から65歳までの死因の約25%を占めており、脳血管疾患は後遺症の問題から労働能力の大きな損失を被り、QOLの低下を招く。また、長時間労働や過重労働は、これらの疾患の発症に関与していると考えられる。従って、脳血管疾患・心疾患への対策は、産業保健現場において、労働者の健康の保持増進の側面及び労働災害(過労死)の防止の側面から重要な課題である。さらに動脈硬化性疾患は、リスクファクターの解明も進み予防可能な疾患群と考えられる。
動脈硬化性疾患予防ガイドラインが2022年版に更新され、以下の点が主な改訂点である。
1.随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値が設定された。
2.脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用された。
3.糖尿病がある場合のLDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値について、末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100mg/dL未満とし、これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dL未満とした。
4.二次予防の対象として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓症脳梗塞も追加し、LDL-Cの目標値は100mg/dL未満とした。さらに二次予防の中で、「急性冠症候群」「家族性高コレステロール血症」「糖尿病」「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は、LDL-Cの管理目標値は70mg/dL未満とした。
5.近年の研究成果や臨床現場からの要望を踏まえて、新たにいくつかの項目を追加した。
そこで、本シンポジウムでは、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022の改訂点の詳細や背景とリスクの考え方を、動脈硬化性疾患予防ガイドライン委員長の岡村智教先生に解説いただき、その重要性と産業保健現場における活用を考えたい。次に、エビデンスに基づき、動脈硬化性疾患予防重要な手法である食事指導の詳細を丸山千寿子先生に解説頂き、動脈硬化性疾患の予防のみならず生活習慣の重大なリスクファクターである喫煙に関して、加熱式タバコ及び電子タバコの実態と健康影響を欅田尚樹先生に解説頂き、動脈硬化性疾患対策の最新知見を再度整理したい。この後、働く世代の大規模コホート研究である職域多施設研究(J-ECOHスタディ)から、働く世代の動脈硬化性疾患の現状とリスク背景を、溝上哲也先生より詳細に解説いただき、最後に、職域における動脈硬化性疾患予防の実践とリスク管理について討議できればと考える。なお、本シンポジウムは日本動脈硬化学会との共同シンポジウムである。
岡村 智教1 (1.慶應義塾大学医学部)
丸山 千寿子1 (1.日本女子大学家政学部食物学科)
欅田 尚樹1 (1.産業医科大学)
溝上 哲也1 (1.国立国際医療研究センター)