第96回日本産業衛生学会

セッション情報

産業保健看護部会フォーラム

産業保健看護部会フォーラム ヘルスリテラシーを高める支援とはー働き方の多様化時代における産業保健看護職の役割ー

2023年5月12日(金) 15:30 〜 17:30 第1会場 (ライトキューブ宇都宮 1F 大ホール東)

座長: 中野 愛子((株)日立製作所人財統括本部 京浜地区産業医療統括センタ), 下山 満理(富士通(株)健康推進本部健康支援室)

【医(専)、看】

ヘルスリテラシーは、「健康情報にアクセスし、理解し、使える能力(The ability to access understand, and use information for health)」と定義されている。2014年から経済産業省により提唱された「健康経営」は、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することである。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される。健康経営銘柄の認定基準では、「ヘルスリテラシー向上」が「健康経営の実践に向けた土台づくり」として位置づけられている。

しかし、多くの企業が健康経営に取り組んでいるものの、普段から健康意識のある従業員しか参加しない、取り組みの目的が伝わりにくいなどの課題がある。健康経営の取り組みによってもたらされる健康情報を、
ヘルスリテラシーの高い従業員はより多く入手する一方、低い従業員は入手することをためらう傾向があるからである。健康情報をわかりやすく伝え、意思決定に寄り添う支援ができるのは、昔も今も産業保健看護職である。

 本フォーラムでは、基調講演に、ヘルスリテラシー、意思決定支援、ヘルスコミュニケーションやそのサポートネットワークなどについての研究の第一人者である中山和弘先生(聖路加国際大学)にご登壇頂く。続いて3名の産業保健看護実践者の方々に話題提供を頂く。須藤ジュン先生(西部バス(株))から所属企業の最初の常勤保健師として、旅客自動車運送業における健康起因事故防止のために地道に実践した情報提供・情報発信と健康支援施策について、松田しのぶ先生(エムズ保健師事務所)から運送会社の常勤保健師として、ヘルスリテラシーを高めるための取り組みの事例と開業保健師となり産業保健業務を担当する企業の従業員との向き合い方の難しさについて、田中牧子先生((株)TKC)からIT企業の常勤保健師として、ヘルスリテラシーを高める環境づくり支援と自ら選択した保健行動を実践できる機会の提供について、それぞれご発表を頂く。

 ご発表の先生方の知見や実践活動からの示唆を得て、働き方が多様化した労働者に対して、ヘルスリテラシーを高める支援を実践していくうえで、産業保健看護職にどのような役割や機能があるのかを改めて考える機会としたい。