第96回日本産業衛生学会

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シンポジウム

シンポジウム 9 キャリア支援の現状と課題 ー教育、企業、行政の立場からー

Thu. May 11, 2023 9:00 AM - 11:00 AM 第2会場 (ライトキューブ宇都宮 3F 中ホール東)

座長: 廣川 進(法政大学キャリアデザイン学部), 鶴谷 由美恵((株)OHコンシェルジュ)

【医(専)、看】
共催:日本キャリアカウンセリング学会

若手社員の不適応のケースが、最近増えてはいないでしょうか。デジタルネイティブであることなど、もともとのZ世代の傾向に加え、コロナ対策により卒業式、入学式、修学旅行、部活動、サークル、ボランティア、アルバイト、留学など学生生活全般におけるリアル世界、他者との直接対面経験の機会の劇的な減少。これは対人コミュニケーションスキルを学習する機会の減少でもあります。いま風に言い換えると、「対人スキル」というアプリをインストールするチャンスを逸してきた世代といってもいいのかもしれません。「これだから最近の若者は・・・」と嘆く前に、こうした状況をまず理解したいところです。

 この「コロナ後遺症」ともいうべき世代は、これから続々と職場に参入してきます。インターンシップも、就活面接も内定者懇談会も入社式も新人研修も、その多くをオンライン形式できりぬけ、配属になっても、リモートワークで先輩や上司と直接接する機会が少ない。コロナが落ち着いてきたとしても、コロナ前に完全に戻ることはないでしょう。

その影響はすでにボディブロウのように効いてきているといえます。オンラインでヴァーチャルな世界で過ごすことが多かった若者が職場に配属になって、初めてリアルな世界でデビューする、と考えたらどうでしょうか。そこでいきなりタテの人間関係に投げ込まれ、初めての仕事を覚え、先輩、上司、取引先、顧客などとの直接コミュニケーションを求められるとしたら。コロナ前の「リアリティショック」よりもはるかに深刻な「リアリティショック」が起きても不思議ではないでしょう。

 会社に出される診断書では「適応障害」も多くみられます。リアリティショックや、企業環境の激変による不適応からのメンタル不調のケースなど。人事や産業保健スタッフが工夫できることはどんなことでしょうか。キャリア関連の専門との連携、キャリアカウンセリングができる社内・外の場の確保、EAPやキャリコン養成機関(産業カウンセラー協会、JCDA等)の活用、中小企業はどうしたらいいかなど。大学の最近のキャリア教育や企業現場でのキャリア支援の実態を現場からレポートし、行政側の考え方、施策などについて理解を深める機会としたいと思います。