第96回日本産業衛生学会

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産業歯科保健部会フォーラム

産業歯科保健部会フォーラム 働く人々の多様化への対応 ~すべての人に口腔保健を~

Thu. May 11, 2023 3:30 PM - 5:30 PM 第4会場 (ライトキューブ宇都宮 2F 大会議室201)

座長: 尾崎 哲則(日本大学歯学部)

【医(専)、看】

わが国における歯科保健は、この20年間に、12歳児の一人当たりのう蝕経験(むし歯になったことのある)歯数が1.0を割り、世界の先進国の水準にほぼ達した。さらに80歳では現在歯(口の中にある自分の歯)数は、半数以上の方で20歯を超え、いわゆる8020(ハチマルニイマル)を達成し、歯・口の健康状態は大きく改善されている。

しかし、母子保健あるいは学校保健を通して比較的手厚く、市町村あるいは学校から対処されている小児・学童期でさえも、歯科保健は個人の責任の下で進められることが多い保健領域である。そのため、個人間の歯科保健における健康格差は大きいことが指摘されている。その一例として、小児・学童期では、全くう蝕(むし歯)が無い幼児・児童生徒が増加している一方で、多数う歯(むし歯)により咀嚼機能等に問題を抱えている児童生徒の事例も多く報告されている。さらに、国民皆保険制度下で、ほぼすべての歯科医療サービスが提供されており、歯科におけるUHCレベルが世界の中でも高い国でありながら、成人期以降は、口腔保健状況の格差が、社会経済的な差等によって、より大きくなっていることも知られている。

また、口腔の健康状態と全身の健康状態との関連性についても、広く知られるようになってきたとともに、この数年に、働く世代に関する歯科保健対策として関連がある事項としては、平成30年に特定健康診断の標準的な質問項目に歯科関連項目が入り、さらに、医療保険の保険者を対象にしたものであるが、後期高齢者医療制度への支援金に関わるインセンティブとして歯科保健活動が入るなど、いくつかの改正がなされている。

そこで、本フォーラムは、わが国において労働者が多様化する現状を踏まえ、すべての労働者が、より良い口腔保健状態を達成するために、その人それぞれが持つ特性を考慮し、対処できる口腔保健提供システムを見出すことの一助として開催する。

今回のフォーラムでは、最初に、様々な特性持つ労働者の中から「外国人技能実習生・労働者の口腔保健」に関して、久篠 奈苗 先生から、次いで「非正規雇用労働者の生活習慣と口腔保健行動」に関し、大山 篤 先生から、そして、「障害を持つ労働者に対する口腔保健を生活支援あるいは障害者の社会参加を促す」観点から遠藤 眞美 先生にお話いただく。その後、会場等で参加されている皆さんとともに討議し、多様化する労働者への歯科保健提供のあり方について論議を深めていく予定である。