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シンポジウム
シンポジウム 4 化学物質の自律的管理における濃度基準の設定とアセスメントの実施
Wed. May 10, 2023 1:30 PM - 3:30 PM 第3会場 (ライトキューブ宇都宮 3F 中ホール西)
座長: 小野 真理子(労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所), 武林 亨(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室)
【医(専)、看】
職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書(2021年7月19日)は、「職場における化学物質管理を巡る現状認識を踏まえ、 有害性(特に発がん性)の高い物質について国がリスク評価を行い、特定化学物質障害予防規則等の対象物質に追加し、ばく露防止のために講ずべき措置を国が個別具体的に法令で定めるというこれまでの仕組みを、国はばく露濃度等の管理基準を定め、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みを整備・拡充し、事業者はその情報に基づいて リスクアセスメントを行い、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行することを原則とする仕組み(以下「自律的な管理」という。) に見直すことが適当である。」とし、現在、自律的管理の具体的施策づくりが進められている。
「国が定めるばく露濃度等の管理基準濃度」は、「濃度基準値」とされ、以下のように位置づけられている(化学物質管理に係る専門家検討会の中間取りまとめ、2022年11月21日)。
①安衛法22条(健康障害を防止するため必要な措置)に基づく安衛則577条の2第2項において、労働者のばく露がそれを上回ってはならない基準と位置づける(法令に基づく衛生基準)。
②労働者のばく露は、呼吸用保護具を使用していない場合は、労働者の呼吸域の濃度であり、呼吸用保護具を使用している場合は、呼吸用保護具の内側の濃度で表されることから、有効な呼吸用保護具の使用 により、労働者のばく露を濃度基準値以下とすることを許容する。
③アセスメントの実施手順は、数理モデルの活用を含めた適切な方法により、事業場の全てのリスクアセスメント対象物に対してアセスメントを実施し、その結果に基づきばく露低減措置を実施する。この結果、 労働者のばく露が濃度基準値を超えるおそれのある作業を把握した場合は、労働者のばく露が 濃度基準値以下であることを確認するための測定(確認測定) を実施し、その結果を踏まえて必要なばく露低減措置を実施する。
本シンポジウムは、濃度基準値について、設定、運用、国際動向の現状と課題についての理解を深めることを目的に企画した。労働安全衛生総合研究所の山本健也さんには、アセスメントのものさしとなる濃度基準値の位置づけ、設定ならびに想定されている運用について、同 豊岡達士さんには、あり方検討会報告書でも重要とされている皮膚吸収の防止を進める基礎情報となる化学物質の皮膚吸収性の評価について、OECD(経済協力開発機構)の高木恒輝 さんには、OECDが取り組む職業曝露基準値(OEL)設定のハーモナイゼーションの取り組みについて、ENEOSの持田伸幸さんには、米国でインダストリアルハイジニストとして実務に携わってきたご自身の経験に基づいた米国の化学物質の自律管理とリスクアセスメントについて、それぞれお話しいただく。セッションを通して、吸入ばく露の管理のみならず、皮膚ばく露についても理解を深めて、ばく露のアセスメントをどのように健康障害の防止につなげていくべきかについて、会場全体で学び、考える場としたい。
山本 健也1 (1.独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所)
豊岡 達士1 (1.独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)
高木 恒輝1 (1.OECD)
持田 伸幸1 (1.ENEOS株式会社)