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シンポジウム
シンポジウム 12 産業医部会シンポジウム:産業医の需要供給実態と偏りについて
2023年5月11日(木) 09:00 〜 11:00 第4会場 (ライトキューブ宇都宮 2F 大会議室201)
座長: 宮本 俊明(日本製鉄(株)東日本製鉄所), 谷山 佳津子(朝日新聞社 管理本部労務部(健康管理))
【医(専)、看】
コロナ禍になる以前から、産業医希望者が大都市圏のオフィス街や三次産業に集中し、地方都市にある製造業の拠点には希望者が少ない現状があった。そもそも単位人口当たりの医師数も大都市圏が多いため、圏内医師が産業医業務に注力する時間の捻出が容易というのは理解できるが、圏外医師からの応募についても大都市圏に集中する傾向が強いようだ。地方都市の産業医業務の求人が少ないのではなく、求人しても応募がなく、この傾向は専属産業医で顕著になっていると聞く。
もちろん大都市圏のオフィスについても、メンタルヘルスや過労死防止対策や健康経営や生活習慣病対策などで、行うべき業務が十分にあることは承知している。二次産業の本社機能となると製造拠点の業務を知っていたほうが産業保健全体のマネジメントには良いが、製造部門分社化が進むと本社オフィス単体と産業医不在の支店営業所の統括業務で良いのかも知れない。しかし化学物質管理や両立支援など産業医の支援を最も必要としているのが地方都市の二次産業の製造拠点だとしたら、そこへの供給が少ないというのは、社会医学を標榜する専門家集団の産業医部会としては忸怩たる思いがある。
この実態がどういう理由で発生しており、需給のアンバランスを解消するためには、何をどうすれば良いのか、この状況はテレワークが発達して都心部のオフィスワークが激変したコロナ前後で何か変化があるのか、今後の見通しはどうなのか、などについて有識者および実際に苦労している演者の話を聞いて、会場を交えて議論を深めたいと思う。
演者として、産業医学振興財団と産業医科大学の共同事業として行った調査結果を踏まえて、基調講演としてもお願いした「産業医需要供給実態調査から見えてきた諸課題」と題して一瀬豊日先生(産業医科大学進路指導部副部長)にお話しいただく。次いで、「認定産業医制度の現状と活動支援に向けた取組み」と題して神村裕子先生(日本医師会常任理事 産業保健担当)に主に医師会の御立場からお話しいただく。そして「産業医に求められる技能と倫理」と題して、堀江正知先生(産業医科大学副学長)に長年専門家育成に携わって来られた立場からお話しいただく。次に現場で採用に苦労してきたご経験から「地方製造業における産業医採用の苦労と工夫」と題して守田祐作先生(日本製鉄東日本製鉄所鹿島地区)に、ピンチをチャンスに変える工夫の試行錯誤も含めてご経験をお話しいただく。次いで、地方都市の赤裸々な現状も含めて、「地方における産業医需給ミスマッチの現状と課題」と題して各務竹康先生(福島県立医大衛生学・予防医学講座)にお話をいただく。最後に会場を含めての議論で、国民全体に産業保健活動を拡げる第一歩として、地方格差をなくして産業医需給バランスを少しでも改善できないか、皆さんで検討してみたい。
一瀬 豊日1 (1.産業医科大学)
神村 裕子1 (1.公益社団法人 日本医師会)
堀江 正知1 (1.産業医科大学)
守田 祐作1 (1.日本製鉄株式会社 東日本製鉄所 鹿島地区)
各務 竹康1 (1.福島県立医科大学医学部衛生学・予防医学講座)